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うふふふ。
手の甲を目の前に掲げて眺め、くるんと手のひらに返してまた眺め、もう一度ひっくり返して、さらに眺める。
手を動かす度に、チラリと視界に入るリングが、嬉しくてたまらない。
にまぁ、っと緩んでしまう頬が一向に元に戻らない。
「ククッ、翼。おい、翼」
え?あ…。
サラダを俺の皿に取り分けてくれながら、火宮がじっと俺のことを見ていた。
あは…。
一部始終を観察されていたのか。
恥ずかしさから、思わず愛想笑いを浮かべてしまう。
「クッ、そこまで喜ばれるとは、プレゼントした甲斐があるというものだな」
ククッ、と笑っている火宮も、なんとなく普段よりテンションが高めだ。
「ほら、翼」
サラダを取り分けてくれた皿が、ずいっと押し出される。
げ。この赤と黄色の物体は…。
「………」
無言で皿を押し返してやる。
「翼の分だぞ。ほら」
「………」
だからいりませんって。
これでもかというほど、わざとらしく盛り付けられたパプリカは、絶対火宮の確信犯だ。
本当、ちょっといい雰囲気かと思えば、すぐこうして意地悪をしてくるんだから。
このどS。意地悪。バカ火宮。
どうせしゃべれない俺は、思う存分、心の中で暴言を吐いてやる。
「ククッ、なんだそれは。仕置きの催促か?」
へ?
え?俺、何も言ってない。
「どS、意地悪、バカ火宮、あたりか?本当、おまえはな」
えっ?何この人。
いつの間に超能力なんて身につけたわけ?
あまりに内心ドンピシャすぎて、うっかり思考が混乱する。
「ククッ、超能力じゃないぞ。本当、おまえの目は、語りすぎだ」
クックックッ、と身体を折り曲げて喉を鳴らしている火宮は、本当に心底楽しそうで。
あぁ、もう、なんだこれ。
揶揄われているんだけどそうじゃない。
こんなに幸せでいいんだろうか。
ーー火宮さん。
「ん?なんだ」
っ…。声にしていないのに、やっぱり間違えずに分かってくれる。
ーー 一生大事にします。
あなたという、かけがえのない存在を。
「ククッ、それ、ずっとつけていろよ」
学校にも?
小さく首を傾げたら、ニヤリと笑った火宮が頷いた。
「当然、学校でも、風呂でも、だ」
っ…。
与えられる、強い束縛、だけど嫌じゃない。
「もし外したら…心底後悔するまで、きつい仕置きだな」
恋人と揃いのリングを外すときというのは、恋人を裏切るとき…浮気をするときくらいだからな、って…。
ーーしませんよっ!
外すわけない。こんなに大切なもの。
もし外してうっかり失くしでもしたら大変だし。
チュッ、と自分の薬指に唇を寄せたら、火宮の目が、優しく柔らかく弧を描いた。
「いい子だ。では約束したところで、さぁ食べろ。早くしないとメインが来るぞ」
ほら、と押し出されたのは、大量パプリカ入りサラダで。
だからいらないって言ってるから!
本当もう、そこから離れて…。
だけど、この意地悪っぷりが、ほんと火宮だな、って思うから。
なんだかそれが可笑しくて、ホッとして。
じわりと胸の奥から溢れてくる気持ちは、たまらないほどの愛おしさだった。
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