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差し出した両手に、カチャン、と金属の輪っかが嵌められ、俺は深い諦めのもと、静かに目を閉じた。
あぁ、きっと霧生がしたことをそのままそっくりなぞられる。
両手を拘束されての、バイブに鞭に…と覚悟を決めたところに、ククッと火宮の笑う気配がした。
「っ…」
「これから何をされるか、分かってます、という態度だな」
潔いことで、と笑った火宮が、スルリとお尻を撫でてきた。
「っ!だ、って…」
塗り替える、って言われたし。それは上書きするって意味なんでしょ?
独占欲も嫉妬心も、並みじゃない火宮のことをよく知っている。
「ククッ、それは、苦痛にも耐える覚悟があるということか」
「そ、れは…」
嫌だけど、火宮がお仕置きって言うんだったら仕方がない。
「ふっ、確かに、俺以外の男に好きだなどと、たまには仕置きに痛みを与えてやるのもいいかもしれないが…」
「っ…」
「おまえにはやはり、こっちだろう?」
ぱさり、とお尻に触れたのは、鞭…?
だと思うのに、なんだかいつも火宮が扱う1本のそれとは違う感触で。
「こんな、苦痛なだけの打ち方をされて…。こんな鞭跡など、綺麗さっぱり塗り替えて消してやる」
「っあ!」
パシッ、と振るわれた鞭が、お尻の上で弾けた。
「ククッ、いい音が鳴る」
「っあんっ!ひゃっ!」
パチン、と上がった派手な音に、ビクリと身体が揺れた、けど。
あれ…?
「んあぁっ。ふぁっ?」
派手な音の割に、苦痛をそこまで感じない。
それどころか、じわりとむず痒く湧いた、この感じは…。
「な、に、これ…」
気持ち良さに近い感覚にギクリとして、俺は恐る恐る後ろを振り返った。
「っ?!」
「ククッ、バラ鞭だ。打ち方1つで、いくらでも快感を引き出せる」
「っな…」
柄の部分は1つで、そこに数本の革紐が束ねられているような、先がばらばらといくつにも分かれた鞭を振って、火宮が口角を上げる。
「テクさえあればな」と言外に聞こえたその言葉に、クラクラと目眩がした。
「な、んのテクニックですかっ…」
このどS。鞭を好きなように操れる技術とか。バカなの?
「ククッ、気持ちがいいようにだけ打ってやる」
「っな…」
薬も使わずに、そんな真似…。
「ふっ、せいぜい快楽に身悶えて啼くがいい」
パチン、とまた1つ、鞭が肌に当てられた。
「っあん…」
じわりと湧いた気持ちよさを、俺は首を振って振り払い、必死で、感じるものかと歯を食いしばった。
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