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「それにしても、どうして本家なんですか?」
ふぁぁ、と、生欠伸を繰り返しながら、俺は車中の人となっていた。
「どうしてとは?」
後部座席、隣に座った火宮が、パラパラと手元の書類を捲りながら、チラリとこちらを見た。
「えー、だって火宮さん、その、制裁?とかって、自分で…」
「ククッ、気持ちはそうだがな、あれでも霧生は七重組2次団体の1組織を治める長だ。いくら向こうに一方的な非があることだろうと、イロを攫われた、というだけで、七重組(うえ)を通さずに、蒼羽会(うち)が勝手に輝流会を潰したら、後々面倒なんだ」
「そうなんですか…」
ヤクザ社会の決まりとかは、俺にはまだたまだ分からないことだらけだ。
「きっちり筋は通さなければな、反対にうちがああだこうだ言われかねない」
「へぇ…」
「だが安心しろ」
「ふぇ?」
「すでに霧生は表面に出ないボディーはとことん痛めつけてボロボロだし、背中も臀部も鞭でズタズタさ。見えない足の爪も全て綺麗に剥がし…っと、おまえに聞かせる話ではなかったな」
うわー、うわー、うわー。
話を聞くだけで痛いよ。
思わず顔を歪めてしまったんだろう。
火宮が俺を見て、苦笑しながらポンポンと頭を撫でてくれた。
「忘れろ」
「う、んっいえ…」
あなたがそんな残酷な真似をするのは、俺のせいだもんね。
俺はそれから、目を逸らすことはしないよ。
あなたを罪ごとすべて抱き締める。
「火宮さん…」
俺はあなたのすべてを、愛してる。
コテンと火宮に寄りかかった俺に、火宮の瞳が優しく弧を描いた。
「ククッ、どうした。眠いのか?」
「んー」
「着いたら起こしてやるから、着くまで寝ていていいぞ」
「っあー…」
ぐい、と引き倒されて、ぽすんと火宮の膝枕に頭を預けてしまう。
「クッ、触り心地がいい髪だ」
「んっ…」
パサッと座席に書類の束を放り出した火宮の手が、サラサラと優しく髪を撫でる。
あぁ、気持ちいい。
ゆったりと目を閉じて、火宮の心地よい膝の体温と、髪を撫でる優しい手に身を委ねる。
「会長、お仕事は!」と目くじらを立てる助手席の真鍋の声と、「うっ…」と短く呻いて、フラフラと車体を蛇行させた運転手の声が、ウトウトと眠りの世界に旅立とうとした俺の耳に聞こえてきた。
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