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そんなこんなの道中の末、俺たちを乗せた車は、目的地らしい別荘とやらにたどり着いた。
スッ、スッ、と並んで止まった車から、それぞれみんなが降りてくる。
「うわ。でけぇ…」
「これは…さすがだね」
目の前にドーンと佇む、大きな一戸建てに、豊峰の口がポカンと開き、紫藤の目が微かに見開かれていた。
「うわぁ、高級リゾートって感じ」
「ククッ、敷地内にプールもテニスコートもあるぞ」
好きに楽しめ、と笑う火宮は、本当、さすがの火宮様だ。
「あぁぁ、能貴、数時間ぶりー」
「………」
向こうでは、早速夏原が真鍋に絡みに行って、華麗に躱されているし。
「ふふ、なんだか楽しくなりそうです」
「そうだな」
にこりと笑って、ポンポンと火宮が頭を撫でてくれたら、なんだか遠くの方から「ひっ!」と短く息を飲む声が聞こえてきた。
「………?」
「ククッ、ほら翼。中に入るぞ」
スッとエスコートされ、別荘内に足を踏み入れる。
「う、っわぁ!」
すごい。
完全に高級リゾートだ。
テレビとかで見る、芸能人の別宅、みたいな。
「クッ、ほら、俺たちの部屋は向こうだ」
来てみろ、と誘われて、思わずふらりとついていくけれど…。
「ん?俺たち?」
「当たり前だろう?なんだ、おまえは、まさかみんなで雑魚寝などと思っていたわけではあるまい」
「え、や?」
ちょっと思っていたとか、この顔をした火宮には言えない。
ニヤリ、と口角を上げて、ここぞとばかりに攻める気満々に見つめられたら、嘘でも出任せでも、ひたすらに否定するしかない。
「クッ、みんなそれぞれ、真鍋が適当に部屋を割り当てている」
「そ、そうですよねっ。当たり前ですよね」
じゃぁ夜集まってゲーム大会とか、枕投げとかは、さすがにナシかぁ。
「ちなみに他のお部屋は?」
「豊峰は紫藤とツインルーム。真鍋は単独だろう。まぁ夏原も単独だが、どうせ転がり込もうとして、真鍋に簀巻きにでもされて、廊下に放り出されるんじゃないか?」
うわー、本当になりそうで怖いな、それ。
あまりに想像がつきすぎて、苦笑も浮かぶ。
「護衛たちは適当に2、3部屋に分かれて泊まるだろう」
「へぇ。……って、え!」
ちょっと待って。何気なく聞いていたけど、この別荘には、一体いくつの部屋があるというのか。
「メインの寝室、サブの寝室、ゲストルーム、後はバストイレがない部屋がいくつかあったか?」
「いやもうそれ、ホテルですよね…」
それが個人の持ち物って、どんだけだ。
「ククッ、まぁ気になるのなら、後で見て回れ」
「はい」
「今はとりあえず、部屋に行くぞ」
「はい…。あ、そう言えば荷物…」
うっかり火宮に連れられて、手ぶらでここまで来ちゃったけれど。
「そんなもの、部下たちがちゃんと運び込む」
「あー」
もうそれ、完全にホテルだ。
「ん?」
「いえ…」
ここで意見したところで、どうせ無駄だ。
相変わらず、どこのセレブだ、と思うような、ヤクザのトップ様には、慣れるしかない。
半ば諦めと共に、火宮に連れられて、俺たちが泊まるというメインの寝室に向かった俺は…。
「っ!」
もう驚くまい、と思うのに。目の前に広がる室内の光景は、思わず息を飲むようなもので。
「やばい!オーシャンビュー!何このだだっ広いデッキテラス!」
バタバタと駆け寄った窓からの絶景に、色々なことが頭から吹き飛んだ。
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