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耳障りな目覚ましの音で目が覚めた。
目覚めの良い僕はすぐに目を開いて目覚ましを止めた。今日が始まる。
別に僕は今の高校生活に不満はない。
なんなら皆が僕をチヤホヤ甘やかして良い気分なくらいだ。
高校二年生になった今でさえ、僕は可愛い可愛いと周りから褒め称えられ、何でも出来る僕を羨む人は多々いるだろう。
僕は高校生でありながら一人暮らしをしている。というよりせざるを得ない環境で生まれ育った。
僕の両親は世界を股に掛ける営業マンだ。そんなのが当たり前の僕は、別に寂しいなんて感情は微塵たりとも感じない。
昔は感じていたのかも知れないが、そんな遠い昔の記憶などこれっぽっちも覚えていない。
素早く身支度を終え、朝ご飯も食べずに学校へ向かう。
家から徒歩数分の所にあるため、家を出るのは始まる十分前くらい。
ゆっくり歩いていると、後ろから走ってくる足音が聞こえた。
「おはよ、優」
そう爽やかに僕に声を掛けたのは新しく高校二年生になってから仲良くなった志村大貴だ。
「あ、大貴。おはよ」
微笑みながら挨拶を返すと、大貴は僕の隣に並んで歩き出した。
僕は背があまり高くはない。なので歩幅も普通の高校生と比べたら狭いんだろうと思う。だが大貴はそんな僕に当たり前の様に合わせてくれている。優しいんだなと感心した。
「今日さ、久々に服買いに行きてえんだけど、着いてきてくんない?」
お洒落に敏感な大貴は買い物が好きらしい。僕はあまり外に出て他人と接するのは得意じゃないけど。
「うん、いいよ。僕も行きたいと思ってた」
なんて軽く嘘を吐けば、大貴は嬉しそうにありがとうってお礼を言われた。
学校の校門に着いた所で、予鈴が鳴った。
「やべえ、走ろ」
大貴が僕の手を取って走り出した。何だか悔しい。僕の方が走るの速いのに。だがここは黙って大貴に引っ張られた。悔しいけど、嬉しかったから。
教室に着いたのは本当にギリギリで、着いた途端にチャイムが鳴った。
この学校はやけに遅刻にはうるさく、一秒でも遅れたら遅刻になってしまう。
クラスの全員は既に教室に居て、僕らを見て笑った。
「優おっせーよ!」
そう言って一人のクラスメイトは僕の肩を叩いた。
ふふっ、と笑って返す。
大貴を見ると何もなかったかのように席についていた。
僕も大貴の隣の席に座った。僕らは席が隣同士って事もあり、仲良くなれた。
「良かったね、遅刻しなくて」
大貴にそうやって話しかけると、そうだなって笑い返してくれた。何だかそれが擽ったくて。
そこに担任が入って来て、SHRが始まった。
それからというもの、何事もなく普通の一日が過ぎた。
大貴と一緒にお弁当を食べ、昼休みを過ごし、眠い五限を終え、掃除もこなし、放課後へ。
「さて、行こっか」
大貴の合図により、僕たちは学校を出て電車に乗り、大型のショッピングモールへ向かった。
放課後に誰かとどこかに出かけるなんて久しぶりで、僕も実質ワクワクしているっていうのは大貴には内緒で。
「あ、夜飯一緒に食う?」
電車に揺られていると、大貴が提案してきた。誰かとご飯を共にするのも久しぶりで、誘ってくれた事が嬉しかった。僕は素直に満面の笑みで頷いた。
「だったら家で食べない?」
.....え?
「あ、別に嫌なら全然いいよ?」
僕がきっと固まってたからだろう。大貴は少し寂しそうにそう言った。
早く否定しなくちゃ、嫌だなんて思ってないよ。
「ううん、大貴の家で食べよ」
一瞬びっくりした様な表情を見せて、大貴は微笑んだ。
「決まりな」
僕の頭をポンと撫でた後、ちょうど僕たちの降りる駅に着いた。
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