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記憶の夢でさようなら③残酷描写あり
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しばらくすると、声が聞こえなくなり、手も振りかざされなくなった。
しかし、あたりは真っ暗だった。
さっきのような事があるのではないか、そう思うと不安になった。
「だれも、いないの?」
暗闇に向かい、呟く。
『幸せになりたいよ…愛が、温もりが、欲しいよ…』
どこからか、聞き覚えのある声がする。
(この声は…僕?)
その声は何かを語り続ける。
『誰も愛してくれなくて、苦しいよ、痛いよ。』
『愛して、愛して、愛して』
『忌み子なんて言わないで』
(…小さい頃、こんなことを思っていた気がする…)
ハッキリとは思い出せない。
どれくらい前で、どんな感じかは曖昧である。
しかし、どの言葉も知っている。
心の奥にある、記憶の残滓。
「ねぇ、君は幼かった頃の僕なの?分からない、分からないの。幼かった頃の記憶がなくて…」
瑠璃がそう言うとその声は、喋らなくなる。
『知って、どーするの?』
「え?」
その声はポツリと呟く。
『苦しすぎて、悲しすぎて、痛すぎて、僕を忘れたなら、思い出してどーするの?』
まだ幼い声。
また、ポツリと呟く。
『覚えてないのはしょーがないよ。じこぼーえーってやつ?』
「自己防衛?」
『うん。自分が壊れないように、人間は自分を守るんだよ。』
「自分を…守る…」
『君にもあるんだよ、じこぼーえーが。』
「僕にも……」
『今の僕には分からない。けど、じこぼーえーが起こるほど大きいショックが心を潰そうとしたんじゃないかな?』
「分からないよ…」
瑠璃は本当に分からなかった。
自分はどうして過去の記憶が無いのか。
もし、その声の言っていることが本当なのなら、それは思い出さない方が、いいのかもしれない。
『少し見る?過去を。』
「え?見れるの?」
その声に驚く。
『うん、でもどうなっても知らないよ』
それでも、瑠璃は知りたかった。
どうして記憶が無いのか。
過去に何があったのか。
『じゃあ、少しだけ見せてあげるね。』
そう言うと暗闇から小さい男の子がひょこっと現れた。
小さくて、女の子みたいに可愛く、茶髪でくりくりした大きな目。
紫色の痣や鋭く切れて血が滲んでいる傷が所々にあり、見ていて痛々しかった。
でも、瑠璃は確信する。
自分の目の前にいる男の子は、紛れもなく過去の、幼かった頃の、自分だった。
「っ!」
ヒタヒタと音を立て近づいてきた。
『じゃあ、見せてあげる』
そう言うと、自分のおでこを瑠璃のおでこに当てた。
『いくよ』
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