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朝①
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次の日の朝、叶多は瑠璃に謝った。
「昨日はあんな乱暴なことをして、ごめんね…」
素直に謝る叶多を見て、少し笑ってしまう。
「なーに笑ってんの?」
プスっと頰を膨らませて瑠璃を見る。
「ふふ、謝るなんか、らしくないと思って…」
「じゃあ、許してくれる?」
「うん、怒ってないよ」
優しく微笑みかけると叶多も嬉しそうに微笑み返してくれる。
「そういえば、明日、終業式だね!」
「あれ?!明日だっけ?!」
瑠璃は叶多の顔を見る。
「うん?そうだけど…」
すると瑠璃の顔は見る見るうちに青ざめていく。
「どうしよう!冬休み中に夏樹さんの所に一旦里帰りしないと!」
「夏樹さん…?」
叶多は不思議そうにくびを傾げる。
「ああ、夏樹さんは僕の里親?みたいな感じの人だよ!」
「へぇ、そうなんだ。」
「それで、長い休みの時とかに帰ってきてって言われててね」
瑠璃は満面の笑みで叶多を見ている。
そして、叶多が、重たそうに口を開く。
「そういえば、昨日の夜の事なんだけど…」
叶多は気まずそうに話を振る。
「え?あぁ…でも、叶多君に、言っておかないとだよね。」
瑠璃は一人納得し、叶多を見る。
そして、意を決したように口を開く。
「実は、高校に入る前の記憶が全くではないけど、ほとんどないんだ…もちろん、夏樹さんと過ごした記憶はあるよ!でも、それ以外は何も…」
「瑠璃…」
叶多は申し訳なさそうに瑠璃の顔を見る。
「それでね、夜、夢を見たの…過去の、幼かった頃の自分が出てくる夢を…それで、その子に言われたんだ。思い出さない方がいいんじゃないかって…」
瑠璃はそっと俯いてしまう。
「でも、思い出したくて、言ったの。思い出したいって。そしたらその子が僕の記憶の残滓を見せてくれたの…」
「そうなんだ」
叶多はテーブルに出されていたコーヒーを一口飲み、瑠璃に優しく聞く。
「ねぇ、瑠璃は思い出したいの?昔のこと。」
「え?」
「それは、知って、本当に後悔しないの?」
瑠璃は叶多の言ったことの意味を理解するのに遅れる。
「もし、仮に思い出したくなくて、それで、自分の理性とかとは別に脳が勝手に記憶を抹殺するとするよ?」
瑠璃は顔を上げ、叶多を見る。
「もし、瑠璃の脳でそんな事があったら、間違いなく思い出しちゃいけない記憶だと僕はおもうんだよね。」
「思い、出してはいけない?」
「そう。脳がそうやって消したってことは、相当精神が壊れそうだったって事なんじゃないのかな?」
叶多は真剣な顔で、瑠璃を見る。
「精神が、壊れる…」
その言葉だけが脳内をぐるぐるしていた。
叶多はすぐに、微笑んで、
「でも、もしかしたら、思い出した方がいいのかもね」
と言った。
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