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過去の苦痛と愛の決断③(視点 遼河)
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「ただいま」
ガラガラとドアを開く音がして、遼河は玄関に向かうと夏樹が立っていた。
「な、夏樹さん…」
遼河に釣られたのか満留もやって来た。
「おかぁーり、夏樹さん…」
眠そうに目を擦る満留。
「…」
夏樹さんは何も言わない。
ただ、緊迫した空気だけが辺りに充満していく。
「夏樹さん…」
遼河が口を開くと夏樹はそっと首を振る。
「満留、遼河、リビングに行ってなさい…」
夏樹はまた外に出ていく。
「満留…リビングに行こうか?」
満留の方を向くと
「うん…」
と答えた。
そして遼河は満留を連れてリビングに行った。
リビングの中心にある大きなソファーに座ると満留も遼河の隣に座った。
「…」
ただ、時だけが去っていく。
しばらくして静まり返ったリビングに夏樹が入ってくる。
遼河はただそっと夏樹を見ていた。
「あなた達に言わないといけないことがあるの」
そう言ってまたリビングを出ていった。
数秒で夏樹は戻ってきたが、夏樹は満留よりはるかに小さい男の子を連れてきた。
「この子をうちの家で預かることになったの」
小さい男の子は茶髪だったが下を見ていて顔が見えない。
だが、ズボンから少し出たその細い足には無数の黒い痣が出来ていて、明らかに普通の子では無いことは幼かった遼河でも理解出来た。
満留はずっと小さい男の子を見ていた。
「お名前は?」
満留が小さい男の子に声をかける。
しかし、ビクリと体を震わせ何も言わない。
「この子達はいい子よ、だから安心して頂戴。」
夏樹が優しそうにその小さい男の子に話しかける。
「ぁ…」
その小さい男の子は声を上げたが下を向いたままだ。
「…この子は瑠璃君、臆病だけど優しくて、いい子だから仲良くしてあげて」
と夏樹がフォローを入れる。
すると満留がソファーから立ち上がり、その瑠璃と呼ばれた少年に近づいていった。
「僕、満留!よろしくね!」
ニッコリと満面な笑みを浮かべ自己紹介をする満留。
すると、瑠璃は少し顔を上げた。
その顔の頰にはガーゼが付いていて、分かりづらかったが、明らかに女のような顔立ちだった。
「ぁ…ょ、よろくお願います…」
言葉は抜けていたがなんと言ったのかはわかった。
なので尽かさず遼河も自己紹介をする。
「俺、遼河。よろしく」
怖がらせないよう最善の注意を払う。
「は…い…」
微かに返事をしてくれる瑠璃。
すると夏樹が遼河と満留をみて、
「これなら安心だわ…頼むわよ、2人とも」
と優しく微笑んでくれる。
これが初めて瑠璃とあった時の事だった。
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