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過去の苦痛と愛の決断⑤
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紫は特徴的な白の髪をしていたため、とても目立つ。
しかも、笑顔がとても素敵で女の夏樹でも見とれてしまうほどの美貌の持ち主だった。
でも、絶対にヤクザなどと言う危ない人達に付いていくような事はしない人だった。
紫が失踪してからみんなして
「なにか知らないの?」
「紫さんどうして来ないの?」
と言われた。
それを言われる度に夏樹は傷ついていった。
「紫がいない」という実感。
そして、何よりも親友だと思っていたのに相談されなかったこと。
出回る噂もほとんど紫のことを悪く言っているものばかり。
信じられなかった。
いや、信じたくなかった。
「ねぇ、紫…どこにいるの?何をしているの?どうして…相談してくれなかったの?」
ただこの言葉だけが自分の中を回っていた。
苦しくて悲しくてたまらなかった。
しかも夏樹は紫以外とはあまり関係を持っていなかった。
そのせいもあり、夏樹はいつも1人きりで過ごしていた。
そんなある日だった。
街を適当に見て回っていたら、視界の隅に白が見えた。
「ゆ、ゆかり…紫!」
いつの間にか叫びながら無我夢中で視界に捉えた白の方へと走っていた。
「紫!どこいってたの?心配したよ?!」
真っ白な髪、華奢な肩。
彼女はゆっくりこちらに振り向いた。
綺麗な花柄の着物は素人目でも上質なものだと分かった。
「…すみません、どちら様ですか?」
首をかしげてこちらを見ている。
「何言ってるの…?夏樹だよ…?」
泣きそうになりながら夏樹は紫を見る。
顔は絶対に紫なのだ。
なのに、紫は夏樹のことを覚えていなかった。
「どなたか存じ上げませんが…急いでいるので私はこれで失礼します…」
そう言って再び前を向き行ってしまった。
頭の中が真っ白になった。
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