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過去の苦痛と愛の決断⑨
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涙が溢れ出てきた。
あの時が1番最後。
そう思った時には後悔しかなかった。
「うぅ、ああぁぁぁぁ!」
泣き叫んだ。
翠は冷めた目でずっと夏樹を見ていた。
そしてそっと口を開いた。
「紫はもう戻ってこないのだよ。紫は自分という概念を壊してしまった。そのせいで感情は欠落し、笑うことも何もできない。」
「な、なんで?!なんでよ!」
声を荒らげ翠に当たる。
「…紫はこうなる運命だった。それを知っていながらも紫は最後の時まで夏樹か殿と過ごした。これがどういう事か賢い夏樹殿なら分かるな?」
夏樹は何も言えなくなった。
運命を知っていた。
どうなるのかも知っていた。
なのに、私と一緒に最後までいてくれて。
「ねぇ、紫…どうして…?どうしてよ…?」
苦しかった。
悲しかった。
心の奥がズキズキして痛かった。
「私はこれで失礼するよ、夏樹殿。もう会うこともないと思うがな。」
いつの間にか翠は消えて屋上には夏樹しかいなかった。
夏樹はオレンジ色の石がついたネックレスをそっと拾い上げた。
きらりと光り、まるで生きているようだった。
紫が選んでくれた石。
『どうしてこの色なの?』
と聞くと紫は
『夏樹ちゃんは元気な感じがするのです!だから、オレンジ!』
と答えた。
そんな思い出すら遠い昔に感じた。
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