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孤高の王様
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四月に新入生が部活に来た。
人数的にギリギリだった烏野にとって、四人の部活希望者は大人数とも言える。
管原は、素直に喜び新入生四人へ向けて、部員たちに号令をかけた。
主将は澤村であるが、気さくな管原は人見知りというものをあまりしない。
「烏野排球部へようこそ!」この掛け声と共に目を輝かせているのは、新入生の中で一番背丈の低い日向。
しかし、すぐに隣にいる黒髪の仏頂面した影山と喧嘩し出した。
管原には影山が仏頂面で平静を掻くような人物ではないと印象づけてしまって、喧嘩のようすに目を見開かせた。
そして、あるひとつの人物と焦点が名前以外合致しないが、思い出される。
「なんでおめぇは白鳥沢に行かなかったんだよ!」
「お前にとやかく言われる筋合いはねぇよ!!ボゲェ」
「ちょっと日向!もしかして、影山ってあの影山なの?!」
「管原さん?」
日向が影山の髪を取っ捕まえていた手を止める。
二年の田中や西之谷も菅原の「あの影山」にはポカンと口を開けて間抜け面を見せる。
管原は再度、影山に目を向け皆に「ほらほら、王様だよ!北川第一の!」記憶を掘り起こさせる。
すると「おーそういうやそんなあだ名の奴がいたなー」薄れかけていた中学時代の異名を思い出す部員たち。
「王様って呼び方、ここでもあるんすね」
「あ、いや……嫌味とかではないさ。ただ、なんでうちみたいな落ちた強豪と言われる所に来たのかな……て」
人見知りをあまりしない管原も、影山の取っ付きにくさに流石に苦い顔をした。
「孤高の王様」と密かに謳われていた影山にとって、「王様」は誉め言葉ではない。
それは、管原を始めとする部員全員が分かっていた。
だが、本人を目の前にすると、抜きん出ていたプレーをする人物特有の異質さを放つ様が、管原たちを凄ませる。
これが「孤高の王様」の威厳、とでも示すかのように。
「俺だって、志望校は白鳥沢っした。けど……」
「……けど?」
急に語尾が萎んでいく影山を驚きながら、続きを待つと「落ちました」と予想外な答えが返ってきた。
「え、特待とか貰わなかったの?!」
「俺のとこには……来ませんでした」
白鳥沢は県内トップを譲らずに君臨し続ける、絶対唯一的な存在感を放つ。
その学校が、影山を必要としなかった。
影山のプレーを見たこともなかった管原だったが、「で、うちに来たんか~。なんか、俺らラッキーじゃね?」とポジティブに影山の入部を喜んだ。
その言葉に、影山はぴくりと肩を揺らした。
そこから談笑タイムが始まり、影山の生い立ちを根掘り葉掘りずかずかと踏み込むのは、言うまでもなく管原のみ。
辛うじて、それに呼応するように質問をする田中や西之谷も徐々に影山を受け入れていく。
影山は返答に困るようなプレースタイルも、管原の気さくで明るい人柄に負け、全てを吐露した。
最終的に「メンバーから捨てられた」あの瞬間のことも。
半ば詰問のようにして質問攻めを繰り返していた管原や田中、西之谷の制止に入ってきた澤村によって、練習は再開された。
影山は定位置でアップに戻る管原を視線で追いかける。
「管原……孝支さん……」
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