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影山の生い立ちはあくまで「セッター」としての素質が、周りと合致しなかったため。
管原を含め、二年三年の部員たちはそう勘違いしていた。
それこそ、勘違いのようで、サーブがあれなら、スパイクもそして、レシーブまでも突出した技術を炸裂させた。
レシーブ専門のリベロとして、西之谷は最初こそライバル心を剥き出しにしていたが、「西之谷さんのサーブレシーブ、手本みたいでした」と影山がべた褒めすれば、両手を腰に回し鼻高々とどや顔である。
「ちっさいからって、仕草大きくしちゃって可愛い~」縁下の珍しいからかいの言葉に、西之谷は赤面だった。
それよりも、管原は影山が西之谷を褒めたことに驚いた。
自分の技術があれほど満点に近いのに、なぜ、他人を褒められるのだろう。
コートの独裁者「王様」じゃなかったのか。
その疑問が脳裏に渦巻くが、管原は一人ネット際でセットアップする。
田中には少し強めに押し出したようなトスを。
普段打たないポジションの澤村には柔らかい優しいトス。
そして、日向には……と考えあぐねたところで、今日初めましての相手の特徴など直ぐに掴めるはずもなく、管原は澤村と同様、優しいトスを無難にあげた。
「うわ、わわっ」
もたつく足を気にして上がったボールとのリズムがつかめず、完璧な空振りを成立させた日向。
「ぷぷ。君、もしかして素人なの?」
月島がすぐに毒づく。
「どうしてもテンポ、分かんなくって」
「てか、その身長じゃ無理でしょ」
「無理じゃねぇ!」
「ほら!」と自慢げに直上でジャンプをして見せる日向に、「確かに無理じゃない高さではあるな」と澤村は感心するが、やはり先程の綺麗な空振りを思い出しては苦笑いだ。
日向は誰にでも突っ掛かれ、いがみ合うが親しみやすいキャラクターでもあった。
そのことが管原に笑みを作らせる。
新入部員が四人。
それも個性の強い面々が、管原たち上級生を刺激する。
内容の濃い練習になっていることは間違いなかった。
「お願いしやっス」
次は影山だ。
これは日向以上に分からない。
管原は思考を巡らせ、ボールが出される寸でのところでセッター交代をさせた。
「俺にトス上げてみてよ」
「う……うす……」
再開しボールが出される。
影山は人が変わったように、何者かに変異してボールの下に潜り込むと、素早いセットアップでトスをあげた。
それはもう、ネットに平行して上げる「平行」とは比べ物にならないくらい早い。
勿論、スパイク専門じゃない管原が手に触れることさえ叶わなかった。
「!す、スンマセン!」
なるほど、「孤高の王様」で、コートの独裁者、ね。
管原の手が触れることなく床に落ちたボールを拾い上げ、「影山、同じやつだしてみるから、打って」
管原は、流石にこんな早いボールは影山も打てまい、そう高をくくっていた。
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