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放課後練、一番乗りで一コートしかない体育館へやって来たのは、お決まりの取っ組み合いをしながらの入場だった。
「俺が一番だ!」
「いいや日向はチビだから俺のあとに続け!」
「まーたやってんなー」管原が渡り廊下から苦笑いをしながら歩いてくる。
「ぅす!スガさん!」
「……っす」
「日向は元気だなぁ。烏野には元気すぎるヤツが多いから賑わってて楽しいよな~」
「な、影山!」ちゃんと影山も話にいれる管原は、天然でしている。
「ほらほら着替えてさっさとアップするぞ」
「お、大地じゃん。えいっ」
「一日に二度も引っ掛かりはしない」
「うわっ」
澤村は管原の曲げてくる膝と同じタイミングで膝を曲げ、管原は体勢を崩した。
それが思ったより大きく体勢を崩したらしく、渡り廊下に後頭部直撃__かと思われたその刹那。
「管原さん!」咄嗟に駆け寄り腕で管原をキャッチする。
「セーフ……ありがとな影山」
「……っす……」
「なに震えてんの?もしかして重い?!ゴメンな!一応高校男児だからね、そりゃ重いよな!」
影山は管原の体重などなんてことない。「ありがとな影山」この言葉を脳裏で何度も再生され、喜びを噛み締めていただけだった。
「……日向……俺ら先に体育館に入ってような……」
「澤村さん?」
「子供は見なくていい」
(影山……そういうことだったんだな)
全員揃ったところでアップが始まり、それが終わるとスパイク練習。
今度は影山と管原二人で上げることになった。
「おっしゃー!影山ナイストス頼むぜ!まずはドシャッと決めたいからな!」
「っす!」
管原から耳打ちされたように優しいトスをあげる。
あくまで試合向きではないトスをあえて一本目に出すことで、スパイカーの調子を図ることができるのだ。
レフトへ放物線を描く綺麗なトスが上がっていき、その頂から落ちていくボールを田中は精一杯腕を降り下ろす。
気持ちがいいほど、ドシャッと叩き付ける音が体育館に木霊する。
「ッシャアァー!今日の調子も上々だぜ!」
「ナイスキーっす!」
「お、おう!」
影山の素直な褒めに照れる田中。
厳つい顔からの赤面は、部員たちには笑いの的となった。
そして、問題は日向だ。
日向はライトからトスをあげる管原のところで猛特訓しているらしいが。
「うわっ」と間抜けな声が聞こえたかと思えば、ビターン!と転ける音が聞こえる。
「うん日向、タイミングさえ掴めりゃ、あとはどうにでもなるな!」
「っす!」
「そうそう、俺が完璧なトスをあげられれば、日向はタイミング気にせず自由に飛んで、バシーンと打てるんだけどなぁ……」
「俺、何でタイミングがいつまでも合わないか、分かります」
「ほぉ?」
「目をつぶってるからなんです!」
「なんで?」
「実はこの低い身長でアタックとかさせてもらったことなくて。実際にやると怖くて……」
「なるほど。0からなんて超都合よくね?」
「へ?」
「癖がないからすんなり教えが身に付くってことだよ!」
「管原さん、スゲーっす!」
日向の尊敬の眼差しは、誰をも有頂天にさせてくれる。
「あ、影山~ちょい来てくんね?」
「管原さん……なんすか」
「俺にトス上げて」
「?……っす」
「はーい、いいよー」と球だしに声をかけ、管原は、センターから影山にボールを送る。
そして、影山の後ろに行くと見せかけてわざとレフトとセンターの中間の位置まで走り込んで飛んだ。
影山も管原を目で追いながら、最終的な位置に正確にトスを出した。
それも管原の降り下ろすちょうどいい打点に。
「流石王様」
「んだと?!」
月島の毒舌に噛み付く。
眼鏡越しから見下ろされる影山だって、低くはない。
ただ、月島が部内で一番ひょろ長いのだ。
「一発で合わせちゃったよ」
「管原さんだって、影山にフェイントかけてたのに」
田中や西之谷も騒ぎ立てる余裕はなく、ただただ脱帽していた。
「よし、これで決まりだな!」
管原の一声に注目を集める。
「日向は目を瞑ってても打てるぞ!」
「影山が全部合わせるから!」と難なく言ってみせた。
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