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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
憂鬱なクーベルチュール① By.夏月亨
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加賀美との付き合いは相変わらずだ。
相変わらず、というのがいつの段階からかと言うと…出会いからほとんど変わっていない、という意味である。
去年1年間はクラスメイトとして同じ教室では過ごせていた。
片思いが実ったのは、3学期の終業式間近。
まあ、その一週間後に体の関係を結んでしまったのはイキナリすぎる展開ではあったけれど…正直、今となっては夢に浮かされた非現実な体験、になってしまっている。
こうやって思い返せば…、片思いしていた時の方がよかったよなあ。
その時のことをつい思い出してはため息が出る。
そう言えば、人生初のバレンタインチョコなんてのも作ったなあ。
サムライ加賀美の夢を見るようになって、実在のクラスメイトの加賀美が気になって仕方がなかった。
気がつけば目が追ってしまう。頭の片隅から消えてくれない。
そして、同じクラスでいられるのはもう最後なのかも、と思い至り「告白するんだ!」と一大決心して…調理なんてやったことがなかったのに毎日チョコまみれになりながらトリュフを丸めたっけ。
何度も試作を繰り返して、ハートは気恥ずかしかったから長方形の6個入りのケースにチョコを詰め、下手なラッピングをしてバレンタイン当日はドキドキしながら学校へ持って行った。
…でも告白の呼び出しをする勇気もタイミングもなくて、鞄の同じ位置から1ミリも動かすことは出来なかった。
翌日の朝、一番乗りを狙って早くに家を出て結局無記名のまま、紺色に白いリボンをかけただけの包みを加賀美の机の中へそっと忍ばせた。
告白する勇気のない意気地なしな自分の代わりにせめてチョコだけは、ほんの少しの時間でいいから加賀美の側に。
食べてなんてくれなくていい。誰だってそんな得体の知れない物を口にはしたくないだろう。
教室にいる面々はやれ他校の女子生徒にもらっただの、今日は彼女とデートだのとざわめいていて、もちろん当日は何となく浮ついた雰囲気が漂っていたが、翌日にはそんな話題も過去のこととあっさり過ぎ去りいつも通りの平穏さを取り戻している。そんな中、平静を装いつつも一日中、どきどきしっぱなしで放課後が近づく頃にはぐったりと疲れきってしまう有様だった。
いつ気づくだろう。持って帰ってはくれるだろうか。
そわそわと様子を伺いながらやっと終業のHRが終わった。
普段なら一目散に教室を出て行く加賀見がその日に限ってすぐに席を立とうとはしなかった。
半数以上が席を立ち、周りの人間が減ってから教科書でそっと隠して青い包みを鞄に移しているのがわかった。
そしてゆっくりとした動作で席を立ち、教室の隅のゴミ箱の前で立ち止まる。
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