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「修弥、お前はこの家を出て行きなさい」
「え?」
久しぶりに両親に会えるから上機嫌でやって来たのに、促されるままソファに腰を下ろした途端に父さんの口から出た言葉は、耳を疑うものだった。
「と、父さん?何言ってんの?俺、何かした?」
「自分の胸によく手を当てて考えなさい」
俺が父さんに理由を問いただすと、今度は父さんの横に座っていた母さんが俺に話しかけて来た。
よく考えろと言われても何も思いつかない。成績は学年トップだし、警察のお世話になるようなこもしていない。
黙り込む俺に母さんは呆れた顔をする。
「......あなたいつも食事に文句をつけているそうね」
「え、だって野菜が多いから」
「やむを得ず子どもを連れてきたメイドには、喚きちらしたって聞いたけど」
「それは......あの子どもが俺にぶつかってきたから」
......それに、俺は母さんとなかなか会えないのにずるいって思ったんだ。恥ずかしいから言わないけど。
「もっと綺麗に掃除しろって、バケツを蹴ったこともあるそうじゃない」
「あ、あれはっ......」
ちょっと足が当たって倒れてしまっただけで、悪気はなかった。けどそんなダサいことは言えず、俺は黙り込む。
そんな俺の態度を肯定と取ったのか、母さんはため息をついた。
「はぁ......会わない間にずいぶんやんちゃになって。昔から言っていたでしょう?人とは誠意を持って接しなさいと」
「う......」
確かに昔からそうやって教えられていたけど、だからこそ両親の気を引きたくてこう育ってしまったわけで。でもそのせいでまさか家を追い出されるなんて思いもしなかった。
「そこでこの人と考えたのよ。ね?あなた」
「ああ。お前は人様の家の執事となって、使用人の気持ちを学んできなさい」
「......は?」
俺が誰かに仕える?この俺が?
「嫌だな、変な冗談はやめてよ」
「冗談なんかじゃないわよ」
くだらないことだと笑い飛ばそうとしたが、笑い飛ばせなかった。母さんは真顔で俺に言ったからだ。そもそも、俺の母親は冗談を言うタイプの人ではなかったことを思い出す。
「お前は会社の大事な跡取り息子。そんなお前が部下の気持ちも分からなかったら会社は終わりだ」
「だから一年かけてその性格を更生してきなさい。ちなみに行き先は皇(すめらぎ)さんの家。息子さんの賢斗(けんと)君とは幼馴染なんだからちょうどいいでしょ?」
「いやいや、ちょうどいいとかわけがわからないし......って、おい鳴上!何をする!?」
「失礼いたします」
後ろに控えていたはずの鳴上はいきなり俺のことを抱き上げた。俺だって平均身長はあるのに、こんな風に軽々と持ち上げるこいつは一体何者なんだろうか。
って、今はそんなことはどうでもいい。母さんの方に目を向けると、母さんは手を振りながらニコニコしている。息子を家から追い出すのに笑顔とか酷い親だ。
「必要な荷物はもう送っておいたから、そのまま鳴上君に連れて行ってもらいなさい。鳴上君、よろしく頼むわね」
「かしこまりました」
「ちょっ、母さん!?嫌だ!鳴上!はーなーせーっ!」
俺がどんなに暴れても鳴上は離してくれなかった。というか、俺が抵抗するのを見越して抱き上げられたのだろう。そのまま車に乗せられ目的地に連れていかれる俺はまるで誘拐された被害者のようで、自分で自分が可哀想になった。
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