アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
三つ、と楠田は傍を通りかかった女性店員が制するのを無視して声を張り上げる。
「昨日の夜、お前は俺を無理矢理抱いただろ!!」
それまで、僅かながらもざわめきを発していた店内がしんと静まり返った瞬間であった。
相手に散々喚き散らされた榎野は、余裕綽々の素振りで脇にあるメニュー表を手に取り、しばらく目を通した後で上目遣いに先輩に言い放つ。
「…だから??」
「…は??」
目が点状態の先輩に、榎野はいっそのこと清々しくさえ思える勢いで堂々と喋る。
「だから、何だっていうんですか。」
もう一回くらい良いじゃないですか、と外見王子はしれっと言う。
「先輩と俺、身体の相性抜群なんですから。」
組んだ手の上に顎を乗せ、王子は蠱惑に微笑んだ。
「…っこの。」
ゆらりと上半身を揺らした楠田は、店どころか向こう三軒両隣に響きそうな大声で後輩を怒鳴りつける。
「最低下衆野郎がぁぁぁ~~~ッ!!」
「お前なんか、カラスの餌になって死んじまええええ~~~ッ!!」
感情のキャパオーバーだったのか。怒りと羞恥で顔を真っ赤にした楠田は、負け犬の遠吠えしながら店内から足早に去っていった。…残された榎野は、意味わかんない、とでもいうように小首を傾げる。
そんな榎野に、女性店員が近づいていく。一応、彼は先刻戯言を喚いていた男の友人みたいだから厳重に忠告しておかねばと思ったのだ。
「あ、あの…お客様…。」
「ん??」
恐る恐るといった体で声をかけてきた女性店員に対し、榎野は笑顔満開で応じた。
「…ねぇ、お姉さん。シフト何時あがり??」
「え??」
キョトンとしている彼女に、美貌の男はすかさず畳み掛けてくる。
「急にごめんね、シフト何時終わるのかな??…俺、君とちょっとお茶したいかも。」
「いッ…いちじか…!!じゃない、さんじゅ…ううん、今日はもう終わりにします!!」
女性店員の仕事魂はあっさり立ち消え、有給でも早退でも駆使してこのイケメンとお茶しようという姿勢に変わる。
「そう…??じゃあ、俺と一緒に店出よっか。」
ニコッと品良く微笑む王子に、女性店員はこくこくと幾度も頷きを繰り返した。彼女を横目に、王子は気取られないよう口を動かす。あのフウセンウオが、と一人呟く…。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 69