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「…ひょっとして、おヘソとられるからですか??服で隠している??」
榎野がニヤニヤして言うと、相手はぷくぅと頬を膨らます。
「…んだよ。お前はしなくていいのかよ。」
信じているのか、この人、と榎野は驚きながら、大変愛らしい景色にこの先絶対に事実は教えないでおこうとかたく胸に誓った。
「…俺はいいです。代わりに。」
再び、雷鳴が響いた。辺りの空気を震わせる。肩を揺らす楠田に、後輩は自らの両手を年上の耳に押し当ててやった。
「先輩を守ります。」
数分ともたない内に、また新たな雷がどこかに落ちる。楠田は後輩の態度に戸惑っているのか。弱々しく目を伏せる。
「ど、どうしたんだよ、榎野…。」
雷鳴が酷い上に耳を塞いでいるので、声が届かないかもしれないが、榎野は精一杯声を荒らげた。
「俺、先輩が好きですから。」
徐々に楠田の頬がほんのりと色づいていく。どうやら、口の動きで台詞が伝わったらしい。耳朶まで真っ赤にしてそっぽを向く楠田に、後輩はにっこりと微笑してみせた。
雷が鎮まると、楠田の感情もある程度落ち着きを取り戻した。後輩は楠田に事情を説明し、電力が戻るまで待つしかないと告げる。
「そっか…。」
雷が終わったのを機に、楠田は後輩の隣に腰掛けていた。まだ雷が来るのを恐れているのか、二人の距離は拳一つ分くらいしかない。
雷が終わったからか。やがて、雨が降り出した。小雨がパタパタと音楽室の窓を叩く。二人で濡れていく窓を眺めていると、不意に先輩が身震いをした。
「…なぁ、寒くない??」
言われてみれば、と榎野は気が付く。音楽室全体に冷気が漂い出していた。雨が降り出したため、気温が下がっているようだ。
リサイタルを控えた先輩に風邪をひかせるわけにはいかない、と榎野は相手に声をかける。
「…先輩、もう一度、膝の上に乗って下さい。」
「…え。」
躊躇い気味の楠田に、後輩はポンポンと膝上を叩いて急かす。不承不承、結局楠田は後輩の言う通りにした。
「…先輩。」
榎野は先輩の両脇の下から腕を通し、相手の腹部前で手を繋ぐ。背後から抱き竦められた楠田は、狼狽の声をあげる。
「えっ…??榎野、これって…ちょっと…っ!!」
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