アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
54
-
楠田は四つん這いになって、後輩の頬に手を伸ばす。ひんやりとした外気の中。ほんのりと温かな先輩の指先が快くて、榎野は双眸を眇める。
後輩の表情を眺め、楠田は小さく溜息をつく。
「…悪く思うなよ。俺はお前が、したようにやる。」
(俺が…何をしたって??)
靄がかった意識の中、榎野は自らに問いかける。が、答えはなかなか出てこない。
後輩の裸の胸まで手を滑らせて、楠田は相手の耳に唇を寄せて囁く。
「安心しろ。さっき飲ませた薬は、催眠効果を持つ媚薬だ。…変なものじゃないぞ。材料はどれも、一般家庭で扱われるものしかない。」
楠田の話通り、後輩の身体は先ほど脱した気怠い睡魔とはまた別の、下半身にたまらない疼きを覚えていた。
言い終えた年上の男は、唇を相手の胸へと移動させる。小さく開いた唇が、榎野の胸飾りを含む。歯と歯で胸飾りを軽く噛まれて、榎野は僅かに身じろいだ。
「うん…。いい。」
両頬をほのかに赤く色づかせている年上の男は、恍惚とした表情で言葉を紡ぐ。
「そうだ。もっと感じろ、榎野。全身で、俺だけを感じて…。」
楠田の声を遮ろうとするかの如く、締め切ったカーテン越しに激しく打ち付ける雨音が聞こえてきた。榎野は無言できゅっと両手の指を握りこむ。耳障りな雑音である。…自分には、楠田の声以外、もう何もいらない。
雨音は、そして二人の戯事は、まだ始まったばかりだ…。
二人が通常とはやや異なる形で思いを遂げた翌朝。目が覚めた榎野は、またしても隣が空っぽの状態に、憂鬱な息をつく。
(あの人の前世は、糸の切れた凧かよ…。)
悪態をつきつつ、榎野は朝の支度を行う。榎野が脱衣所の洗面台鏡前で口に歯ブラシを突っ込んで、シャコシャコと磨いている途中。前触れ無く、玄関のチャイムが鳴った。
(え…っ。もしかして、楠田さんが忘れ物をして戻ってきたとか??)
焦った榎野は、歯ブラシを口にくわえたまま、急いで玄関の扉を開く。
「ふぁ~い。だれれすか…ッ!??」
次の瞬間。榎野は、扉の隙間から繰り出された拳を頬に受け、廊下の床に倒れ込んでいた。口にしていた歯ブラシが派手に弾け飛び、床に落ちては弧を描きながら遠くに転がっていく。
扉から遠慮なくノシノシと入ってきた体躯のいい男を眺め、榎野は若干顔面を強ばらせる。
「…あ、東先輩??」
楠田と同じバンド所属で、ベースを担当する東が、仁王立ちで後輩を睨みつける。突然の事態に目を白黒させる年下を、東は力任せに掴み上げ、激しく上下に揺すった。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 69