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4、
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極道。ヤクザ。
篠田さんはそういう仕事に就いているらしい。
幼い頃に、ヤクザというものはテレビで見た、気がする。
どう言った職種なのかもいまいち分かってはいないけれど、
裏の世界の仕事という事だけは覚えていた。
「でも、置くったって組のもんには紹介しなきゃなんねぇしな…
俺の女として紹介してやろうか?」
くくっと俺をからかう様に言うもんだからついつい顔をぷいっと、背けて「女じゃない…」とだけ反論した。
「ま、冗談は置いておいて、お前、得意なこととかあるか?掃除でも料理でもちょっとした事でもいいぞ」
得意なこと…そんなもの、自分には無い。
知識だって辛うじてあるものの実践できたことなんて極わずかなんだから。
でも、料理くらいなら生きるために何度かした事はある。
「得意ではないけど、料理ならすこしだけ」
ぶっきらぼうに言ってしまい、内心焦っていた。
こんな可愛げもない態度ばかり取っていたら直ぐに追い出されてしまう。
なんとか、少しでも取り繕わなければ。
「なら、お前に仕事だ。俺らの仕事は夜も続く事が多いからな。ウチのもんが腹減らしてた時に飯でも作ってやれ。
夕食とかは各自でとるから必要な時に必要なだけ作ればいい。
それがお前のここに置く条件だ。わかったか?」
「夜食…だけ?それじゃあまりにも割に合わない…もっと他に…」
「随分と律儀な奴だな。ならあとは部屋の掃除もたまに頼もうか。
あとは…
此処は休憩室なだけで家じゃないからな、お前は俺の家に来い。」
この畳の部屋が家じゃないなんて考えてもなかったことだ。
ここがすっかり家だとばかり思っていた。
ここの…組…?にも居させてもらって寝泊まりは篠田さんのお家、だけど自分がする事と言えば夜食を作ることと掃除。
受ける恩が大きすぎる。
かと言ってここを追い出されてしまえばまたあの生活に戻らないといけないし、また、独りぼっちになってしまう。
自分が篠田さんにあげれるものなんて一つも持ってない。
俺なんてせいぜい嫌というほど教えこまれた性の事くらいしか出来ない。
思い出すだけで吐きたくなるようなそんな生活だった。
男なのにオトコを教えこまれて、殴られ、蹴られ。
でも、そんな事でも篠田さんに少しでもあげられるものになるだろうか…
篠田さんだって男なんだし、口でしたら性処理くらいにはなれるかな…
通常の家庭で育ってない俺は正常がわからない。
だけど、篠田さんといたい、それは俺に芽生えた新しい感情に間違いはなかった。
「俺…何も持ってないけど、性処理係りくらいにはなれます。組の人が何人いるかは知らないけど、なるべく頑張る…」
だから、もう捨てないで
会ってまもない篠田さんに早くも縋り付いている自分に混乱する。
ただ、必死だった。
少しでも篠田さんに、気に入れられたい。
喜んでほしい。
厚かましくもそこまで思ってしまっていた。
だけど、当の篠田さんは喜ぶどころか眉を寄せ怒りを隠すこと無く全身で表していた
「お前…そういう事は二度と言うな」
「でも、俺にやれることなんてそれしか」
「言うなって言ったのが聞こえなかったか?
大体、何人いると思ってんだ。無理があり過ぎる。」
俺の言葉を遮ってとても低い声で諭される
でも、ここで引いてしまったら…
「無理でも、頑張る、頑張るから…ッ!?」
お願いと言おうとした口は中途半端に開いたまま篠田さんの唇で塞がれた。
「…ひッ……やぁ…っ…」
それは、何度も無理矢理された苦しい深いキス。
ただ一つ違うのは篠田さんはあいつらとは違って優しく、だけど貪るような、
気持ちよくなってしまうようなキスだということ。
嫌な、嫌な、記憶。
自然のうちに涙が溢れ出てきた。
甘い声とともにしゃくりあげた声がとめどなく零れる。
「…無理矢理で悪かったな。
だが、その提案は受け付けねぇ。そんだけ泣きながら震えてる癖にうちの連中を相手できると思うな。」
あの大きな不器用な手で撫でられる
それだけで酷く安心する。
「いい…無理矢理でもいいから、優しくしなくていい…だから…
捨てないでぇ…」
ぎゅうっと篠田さんに抱き着いて何度も何度も捨てないでと繰り返す。
こんな面倒な俺を篠田さんは引き離すどころか力強く抱き締めてくれた。
「捨てねぇよ。誰と重ねてるかなんて知らねぇが、拾った野良猫は、責任もって飼わなきゃな?」
だから落ち着け、と優しく一定のリズムで背中を叩いてくれる。
こんなに、暖かくて嬉しくて安心する気持ちになれたのはいつぶりだろう
もしかしたら初めてなのかもしれない。
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