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「…なんだこの有様は」
篠田さんが夜になって迎えに来てくれた時には俺はびしょ濡れ。
りっちゃんは手に包帯ぐるぐる。
俺らの後ろにはぐちゃぐちゃなキッチン。
まるで何かそこであったかのような荒れ具合だった。
「まずは、力翔、
お前はなんでそんな事になっている?」
「二人でお料理しようとしてね、指切っちゃって、真くんが巻いてくれたのよ…
料理が苦手なこと忘れてたわ…」
そっと怪我した手を自分の背中に隠すりっちゃん。
「…お前はあいつが居ないと料理なんて出来ないだろ」
はぁ、とため息をつく篠田さん。でも、俺にはあいつって人が分からない。
「あいつ…?」
「真は知らないか、
そうだ、仕置きがてらあいつもここに呼ぶか」
何か思い付いたのかスマホを取り出して少し触るとまた閉まった。
「あいつ…波谷 四季(なみや しき)って奴はな、そこにいる力翔の彼氏なんだよ。すぐ来ると思うが…
それは置いといて…」
彼氏って何だっけ…何かで聞いた…
あと少しで思い出せそうと言うところでりっちゃんが
「呼んだの!?余計な事しないでよ!!四季のお仕置きってほんと怖いのよ!!」
と大きく叫んで篠田さんに訴えていたからここまで出かかった記憶も吹っ飛んでしまった。
「うるせぇ!怖くなきゃ仕置にならねぇだろうが!!
で、真はなんでそんなびしょ濡れなんだ、?」
「蛇口捻ったら水圧強過ぎたみたいでお水出るとこ、飛んでっちゃって、そのまま野菜洗おうとしたら水が飛び跳ねちゃって…
あ、でも、タオルと洋服は貸してもらったの、だから平気」
にこっと微笑んでみせると篠田さんの手が顔に近付いてきてなんだろうと思っているとピシッとデコピンされた。
…じわじわ痛い…
「加減してからゆっくりやってけ
怪我してからじゃ遅いんだぞ。
力翔も気を付けろ。」
篠田さんは呆れたように言って俺とりっちゃんは同時に「はい…」と答えた。
どうしよう。篠田さんに呆れられてしまったかもしれない。
嫌われてしまったかもしれない。
迷惑しかかけてないのだからそれは普通のことなのだけれど、もう、話してすらもらえないんじゃないかと思うととっても、胸が苦しかった。
一つ考えてしまえばどんどん負の感情が襲いかかってくる。
「ちょっ…真…?何泣いてんだ…?」
篠田さんが困った様な声を出した時、漸く自分が泣いてることに気が付いた。
「ごめっ…なさ…
怖かった…お水は暴走するしりっちゃんは切っちゃうしぃ…っ!!」
泣いてしまえば言葉は意外とスラスラでてきて、料理をしてる間、自分は怖がってた事にその時初めて知った。
「焦らなくてもいいから、ゆっくりやってけ。俺に出来ることなら教えてやるから。」
優しく、柔らかく抱き寄せられて篠田さんの匂いに包まれる。
それが安心して余計に涙が大量に溢れてくる。
その間、りっちゃんは何も言わずにいてくれた。
「おい、力翔っ!!怪我したって…っ!」
ノックも無しに部屋に慌てた様子で入ってきたのは俺やりっちゃんよりは背が高く、でも篠田さんよりは背が低い男の人だった。
きっと、この人がさっき言ってた波谷さんだ。
「そ、そんな大したものじゃないのよ、包丁で少し切っちゃっただけで…」
篠田さんやりっちゃんはお仕置きがどうって言ってたけれど、実のところ波谷さんは心配そうにりっちゃんの手を撫でて大丈夫だったか?と何度も聞いている。
お仕置きする人はあんな優しくない、皆勘違いしてる。と思ってたその時…
「お前は不器用なんだから普段から気をつけろっつってんだろうがっ!!何度言えば分かんだよ!?
テメェは鳥か?3歩歩いたら忘れる鳥なのか!?」
怪我した手をぎゅううっと握り締めて、りっちゃんの顔が歪んでいく。
「ごめんなさいって!!だからやめて!!いたい!!!」
りっちゃんが泣きそうになりながら声を上げるも波谷さんは聞こえてないようにずっと力を入れて握り続けていた。
…お仕置きする人だ…
なんとなくそう思ってしまった。
「おい、真?もう帰るぞ、だから離せ」
りっちゃん達のやり取りを見て忘れてしまっていた。そうだ、今俺は篠田さんに抱きついていたんだった…
慌てて篠田さんから離れるも、もう少し…なんて思ってしまうから首を慌てて横に振ってその考えを追い払った。
「あれ、組長!!
そいつ、新入りっすか?」
「ちげぇよ、
俺の…なんだ、まぁ、兎に角、暫くここに居させる事にしたんだよ、」
「組長のオンナなんすか!?」
波谷さんと篠田さんのやり取りを聞いてむかっと来た。
「…俺は女じゃない。」
「あ、あぁ、すまん、驚いて…
俺は波谷 四季。よろしくな。」
すっと手が伸びて来た。けれどなにかされることはなくて首をかしげた。
波谷さんも首を傾げるものだから困って篠田さんを見た。
「握手だよ、手を握り合うやつ。」
波谷さんの、行動の意味を知ってなるほどと納得すれば
「四ノ宮 真です。」
と名乗って恐る恐る手を重ねるとぎゅっと優しく握られた。
人に触られることは多かったけど、あの時は嫌悪感しか無かった。
けど、波谷さんと手を握りあっても少し怖いけど嫌悪感は無くて、触る人が変わるとこんなにも変わるのかと驚いた。
「帰るぞ」
篠田さんに、引っ張られて波谷さんの手を離した。
少し、機嫌が悪い…?
足取りが朝よりも早くてやはり嫌われてしまったのかと思うと胸がズキズキする。
この気持ちは一体なんだろう。
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