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プロローグ①
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その日の朝は、静かだった。
ガラスの割れる音も、物が壊れる音も、お酒の瓶が倒れる音もしない。
目を開けると、朧気な視界に、誰もいないひんやりした空間が映った。
夢なのかな。
そう思った。
「・・・はぁ」
いつも朝日と一緒に飛び込んでくる罵声が無いのは、嬉しいけど、どこか落ち着かない・・・中途半端な気持ちになって、深く息を吐く。
少し身じろぐと、後ろに縛られた手首が引き攣れる感じがした。
「っ」
眩しいなぁ。
窓辺に落ちているたくさんの破片が反射して、視界をまだらにする。
「ん、・・・っ」
手が使えないので、今日に限って開けられているカーテンを口で引っ張ろうかどうか迷った、その時。
目の前を、揺れながら落ちていくものがあった。
「・・・、」
見たことのある光景に、時間の感覚が戻ってくる。
そういえば、今は冬だった。
クリスマスが、ついこの前終わった・・・はず
「・・・っは・・・っ」
お腹に力を入れて上半身を起こすと、足と腰を動かして、なんとか窓辺に膝をついた。
「・・・・・・」
光を忘れた部屋に照りつける太陽は、目の奥が痛いくらいに白いけど。
窓の景色を染めるように、あとからあとから舞い降りては形を失う粉を眺めていると、時間の流れが止まるようだった。
いつから食べていないのか、寝れていないのか、もうあんまり覚えていない。
こんな日が続いていくことがどういうことなのかも、よくわからない。
それが、僕、光石蒼太の毎日だった。
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