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プロローグ②
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今日もいつも通り、メール業務に追われる朝になりそうだ。
メールボックスを確認して、こちらの息抜きを妨げるような「未読」の件数にため息をつく。
俺は三崎要。21歳。
「あ。初雪ですね、いよいよ」
天気予報を見ているのだろう、玄関先に立つ柴田が言った。
「へぇ〜。もう12月も終わりだもんね」
俺も画面を切り替えて天気予報を開くと、予想気温は嫌に低く、確かに「雪80%」を示していた。
「午前中から降り始めるみたいですよ」
その言葉に、リビングの窓から外を見る。
時刻は午前8時。
下の方でアリぐらいの大きさの学生や出勤途中の人達がわらわらと動いていて、空は晴れているのに、雪を溜め込んでいるかのように白んでいる。
・・・こりゃ寒そう。
「一応、傘持っていこうか。帰りが心配」
「用意しておきます」
朝はあまり時間が無い。
起きて、歯を磨いて顔を洗って、着替えて、コーヒーを飲んで、オンライン新聞の主要な記事を読む。そうしている間、いつでも出れるように柴田が立ち構えているのが通常だ。
「天気予報とかニュースとかぐらい、テレビで見ればいいのに。俺はテレビ見ないんだし」
「・・・・・・」
毎朝のように繰り返す俺の台詞を完全に無視するこの男に言わせれば、俺(主人)の家でテレビを共有することは「公私混同」らしくて。
朝食を2人で囲むかどうかで話し合った時期もあるけど、作ってもらっても俺が朝はあまり食べないから、こんな感じになっている。
椅子も使おうとしないのは少々強情だ。
「もしかすると、車内から見えるかもしれませんよ」
俺の不満を横目に、常に一定を保つ柴田の声のトーンが上がった。
たぶん去年の冬も「通勤中に見れるかも」と同じことを言っていた。
柴田は一属の使用人としては若くて、会話のテンポも気持ちいいし、その場の空気を読んだ気使いも常に的確だ。
ただ、俺と年齢が近く経験が浅いことを気にしているのか、「そんなにしなくていいよ」と言いたくなるぐらい几帳面で忠実な性格ではある。
こんな少年のような表情を見せるのは年に数える程しかない。
「・・・ほんとレアだよね」
「何か言いましたか?」
「いいえー、なんでも。それじゃ、出ようか。お待たせ」
コートを羽織り、手に「K. Misaki」と書かれたバッジを握った。
連日の残業で体は鉛が入ったように重いのに、足取りは軽い。
今日頑張れば、明日は土曜日。
いろいろ追い込んで帰ったら、夜食を食べて、持ち帰った書類をチェックして、2時ぐらいには就寝できそうだ。
「あ・・・本当に、降ってるね」
休みの前日の朝はいつも思う。
大丈夫。まだやれる。
疲れは、慣れ過ごさないといけない。
これでいいんだ、俺は。
それが俺の人生だった。
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