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1-8 要side
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俺は男の子を連れて戻ることにした。
柴田は一瞬驚いていたけど、緊急を要するとすぐに察してくれた。
職場の人に適当に連絡を入れながら、後部座席に一緒に乗り込み、小さな頭を膝に置いてやる。
「・・・初めてですね」
「何が?」
「会社に、嘘を」
「・・・・・・そうだね。言われてみれば」
今日まで皆勤記録を更新していたのは事実だけれど、そんなにしみじみされると笑ってしまう。
そんなことが冗談になるくらい、我武者羅に働いていたのは事実だった。
少しの罪悪感はあるけれど、太ももに確かに感じる重みで、頭はいっぱいの状態だ。
「・・・ふぅ」
専務に来週の土曜日を振替日にする約束のメールを打ち、目下の柔らかい髪の毛から覗く顔色を伺って、ようやく肩の力を抜いた。
腕におさまる体は簡単に折れてしまいそうで、あの家を出るまで神経を使いっぱなしだった。
「虐待、でしょうか」
それからあの家の中の様子を話すと、柴田が静かに言った。
そう考えるのが普通の反応だと思う。
男の子を抱えて外に出た時、おそらく近所の主婦たちだろうか、離れた場所からこちらを見てくる集まりがあった。
「ほら・・・あそこの子どもさん、やっぱり」
「あの男性はどなた?」
「やっぱり児童相談所に知らせるべきだったわね。いつ頃からだったかしら」
「引っ越してきた時からおかしいと思ってたのよね」
「ひとりで育ててますって言ってらっしゃったお父さん・・・」
異様な感じだったわよ。
「・・・・・・」
すべて、他人事のような会話だった。
気味悪がるような最後の一言が、重りのように耳から離れない。
「今は寝ていらっしゃるんですか?」
「うん。過呼吸を起こして、そのまま力が抜けたみたい」
目を閉じている男の子に対する柴田の質問はもっともだ。
生きているのか死んでいるのか、わからない顔色なのだから。
響いてくる鼓動が弱々しくて、着くまで、何度も息をしているか確かめた。
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