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「・・・なさい、ご・・・め、な・・・、い」
かける言葉がなくてソファを覗き込んだ俺を見て、男の子が頭を振って謝り始めた。
振り絞るような声は、聞いていて胸が痛む。
「・・・謝らないで大丈夫だよ」
「っごめ・・・なさ、・・・きた、なぃ、ぼく・・・」
「さっきみたいに、深呼吸しよう」
止まない掠れた声に言葉を重ねながら、ベランダに浮かんでいた小さな背中を思い出す。
遠くからは白く綺麗に見えたそこには、大きいものや小さいものまで、たくさんの傷があった。
一体、どの向きに横たわれば痛くないのか、わからないくらい、たくさんの傷が。
「君は、汚くない。だから大丈夫」
怪我をしてるんだから、血が出るなんて当たり前だ。
そんなに広いとは言えないソファで、薄皮のはった膝を抱えて懸命に小さくなる姿は、あまりにも不憫だった。
今は、汚れるとか汚れないとかなんて、これっぽっちも重要じゃない。
「・・・・・・」
「名前、なんて言うの?」
黙ってしまったので、それ以上言えることもなくて、話題を変えてみた。
答えたくなかったらどうしようって聞いてから思ったけど、もう遅い。
「・・・・・・・・・そ、」
「そ?」
遠慮がちに開かれた口元を見つめる。
「そ・・・た・・・です」
「そうた、くん?」
少し顔が揺れるくらいの小さな動きだったけれど、しっかりと頷いてくれる。
いい名前だね、と言うと、驚いたのか少し目が開いた。
「また、知ってたら漢字も教えて欲しいな」
「・・・・・・か、んじ・・・」
続けてそう言うと、今度は何かを思い出すように、上の方を見て目を細める。
漢字を知っているんだと思う。
そういえば、そうたくんは最初からずっと敬語な気がする。
身体は小さめだけど、年齢的には上の方なのかもしれない。
「そうたくんは、いくつ?」
「・・・・・・」
「あ。ごめん、話すのしんどいよね」
いろいろ、聞かれたくないかもしれないし。
またクッと眉を寄せるそうたくんに申し訳なくなる。
仕事以外で面識のない他人と話すのは随分久しぶりで、変に動転しているのは否めなかった。
そうたくんがこんな状態なんだ。一旦落ち着かなきゃな。
「要様、もう少しで準備が出来ますよ」
「うん。ありがとう」
ベストを脱いだ柴田の声に立ち上がる。
とりあえず、先生には連絡してあるし。
さっきの足の出血も止まっていて、応急処置が必要な傷は無さそうだから、まずは体を温めよう。
「・・・・・・こ、こ・・・は・・・?」
コートを脱いで手順を考えていたら、そうたくんが口を開いた。
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