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「・・・・・・みえ・・・ない・・・ですか?」
最初に聞いた時から思っていたけど、
そうたくんの声は、透き通るような響きがある。
少し高めの、声変わりの途中のような声。
なめらかに紡がれてより鮮明になった声音は、中性的な顔によく似合っていた。
「うん。だからそうたくんがどこにいるかも、俺と、柴田以外にはわからないと思うよ」
「・・・・・・、・・・」
よほど「あの人」が怖いのか、そうでもないのか。
固まってしまった無表情からは、ほんのわずかな感情も読み取れない。
唯一わかっているのは、俺がそうたくんに触るのはご法度っていうこと。
・・・ご法度とか久しぶりに聞いたよね。
「そうですね。GPSが付いていなければ、間違っても居場所は特定できない」
「柴田。そんなリアルな話はしないの」
そうたくんは今のところ携帯とか持ってなさそうだけど、普通に怖いわ。
「それか、ここまでの道を、辿られていなければ」
その言葉にギクリとする。
「・・・誰も、尾行してきてなかったよね」
立場上というか肩書き上、幼い頃から何者かにつけ狙われたり、玄関先まで押しかけられたことはあった。
でも、まさか今日に限って・・・
「私の見る限り、どなたの影も見られなかったので、ひとまずはご安心を」
「・・・びっくりさせるなよ」
冗談なのか冗談じゃないのか、顔に書いてくれ。
「・・・そのままなのもあれですし、入られますか」
そうたくんの視線につられて景色を眺めていたら、柴田が浴室の方向を顎でさした。
「あ。そうだね、
そうたくん、おふ・・・」
お風呂がわいてるんだけど、と言いかけて口を閉じる。
「寝ちゃってる」
小声で言うと、柴田は気づいてたみたいで、黙って口角を上げた。
「・・・疲れてたんだろうな」
気持ちだけ傾いた首。
薄茶色の瞳を隠した瞼。
何歳かは未だわからないけど、寝るとぐっと幼くなる。
「傷跡、あるよね」
車の中で気がついたけど。
前髪の隙間から、額の隅に、薄皮の張った切り傷が見える。
なんで、こんなことを。
「『あの人』がいない、来られないんだとわかって、気が抜けたのでしょうね」
「まともに寝ることもできなかったんだ、きっと」
うっすらとある目元の隈を見て、柴田が眉をひそめた。
起こさないように、なるべく物音を立てずに浴室に向かった。
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