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「一旦、電気つけるね」
部屋が明るくなって、一瞬顔を伏せる。
暗いところから明るいところに出たら、いつもあの人が立ってるのに、今はいない。
あてはまらない、いろんな感覚。
「もう喉は乾いてない?」
「え・・・、・・・はい」
もう、の意味がわからなかったけど、
喉は乾いてないから頷く。
「あれ。
お風呂のあとのこと、覚えてない?」
あの人より、背が高い。
あの人より細くて、髪の毛と目が同じ黒色。
聞かれた内容より、明るみになったその人の姿に気をとられていた。
思えば、あの人以外の大人の男の人って、
初めてかもしれない。
男の人でもそう言うのかわからないけど、
きれい・・・な人。
うん。たぶん、そう言うはず。
「もしもーし」
「・・・ぁ、はいっ」
「覚えてないの?」
「あ、えと、
・・・すみません」
「ごめんなさいの次は、すみませんって」
僕の言葉に毎回反応する。
僕の言葉にすぐ返事が来る。
一言一言に、緊張する。
「お風呂に入ったこと自体は覚えてる?」
「ぇ・・・僕、が、自分でですか?」
「や、俺が入れた」
「・・・・・」
「あ。ひとりじゃ無理だったから、柴田も手伝ってくれたけど」
血が下がる感覚がして、指先が冷たくなる。
今さらながら、肌に触れる服の柔らかさを感じた。
・・・もう、なんなの。
信じられない気持ちと、そんなことをされたくなかった気持ちと、させてしまって申し訳ない気持ちが、ぐちゃぐちゃになる。
「できればちゃんと温まった方がいいと思って。
でも安心して、なるべく見ないようにしたから」
「・・・・・・温ま、る」
「そう。あのままだと絶対風邪ひいちゃうもん」
水じゃないんだ。
そう思ったけど、
なんとなく口には出せなかった。
温まるって、体にお湯をかけるのかな。
ていうか、お風呂なんて何日ぶりかで、・・・こんな・・・汚いのに。
ほんとにダメ、こんなの。
顔も全身も隠したくなるのをグッと堪えた。
「そうたくんさ、お風呂上がってからすごい咳き込んじゃって、喉乾いてたんだって気づいて」
慌ててお水を飲んでもらったんだけど、まだ乾いてたら飲んで欲しいなと思って。
そう言って、ベッド横のミニテーブルにある、半分無いくらいのお水の入ったペットボトルを持ち上げた。
そんなに飲んだ記憶はないけど、
言われてみると、しばらく何も飲んでなかったかも。
「あ、・・・も、大丈夫です」
「そっか。また飲みたくなったらいつでも言ってね」
「・・・はい。・・・ありがとうございます」
付け加えると、それは普通のことだから、と言われた。
あの人は、モノを頼む時は、それなりのことをしろって言ってた。
それなのに、
欲しい時に言うだけで、この人はペットボトルを持ってきてくれる。
「・・・・・・、っ」
「そうたくん?」
ここは、世田谷っていうところの、マンションの35階。
そしてここには、この人と、まだちゃんと見ていない柴田さんっていう人がいる。
あの人とこの人は違う。
どう、違うの。
わからないけど、全然違う。
誰なの。
僕は、何なの。
どうすればいいの。
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