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「・・・・・・・・・」
みさき、かなめさん。
漢字は全然思いつかない。
真っ直ぐに見つめてくる目と、
クシャッて笑う顔が頭に残るような、人。
シワのないシャツのボタンが、今は1番上だけ外れていて、
髪の毛は黒くてサラサラで、短い。
僕が喋って動いても、怒鳴ったり、殴ったりしない。
そして、僕の話を聞こうとする。
「あの家で、何があったか言える?」
僕の包帯だらけの手を見ながら、だいたいわかっていそうな目で、そう聞いてくる。
これは、なにかの確認。
きっと嘘はつくべきじゃない。
「・・・よく、覚えていません」
でも、気づいたら僕はそう答えていた。
「覚えてない?」
拍子抜けしたような声が部屋に響く。
今度こそ、殴られるかな。
そう思ったけれど、かなめさんは呆然と頭をかきながら、眉を寄せている。
「じゃあ、あの人って誰?」
「・・・・・・・・・」
嘘が思いつかなくて、今度は答えられなかった。
ダメだ。
衝撃に耐えようと、ギュッと目をつぶった。
なんで本当のことを言えないのか、自分でもわからない。
ただ、あの人の顔を思い出したら、
言ってはいけない気がした。
言ったら、かなめさんに迷惑がかかるかもしれない。
僕を殴る手で、他の人を殴らないとは限らない。
「・・・わかった」
聞こえた一言に、ゆっくり目を開ける。
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