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「今までのことはこれでお終い。
また思い出したら、
・・・話したくなったら、いつでも言って」
「・・・おし、まい」
「ん。一旦ね。
これからのことを考えよっか」
そう言って目を細めたかなめさんが、
ベッドに両肘を乗せて座り直す。
真っ白な、綺麗なシーツ。
頭を包み込むような枕も、びっくりするくらい・・・やわらかい。
「とりあえず、そうたくんは今あの家に帰れない。で、俺の家は見ての通りこんなに広いし、仕事以外のことは誰にも干渉されてない。
そこで、そうたくんにも俺にもできることはふたつ」
ふたつ?
「このままこの家に一緒にいるか、
どこか相談できるところがあるなら、そこに一緒に行こう」
どっちがいい?と聞かれ、「どこか相談できるところ」を考える。
「また立ち入ったこと聞いちゃうけど、
・・・家族はいる?」
「・・・・・・、」
声が詰まってゆっくり首を振る。
「そっか。ごめんね。
じゃあ・・・児童相談所とか、養護施設かな」
行ったことある?と聞かれ、頷く。
「小学校の、3年生まで・・・たぶん、施設から・・・学校に通っていました」
「そうなんだ。どうだった?」
どう・・・?
「居心地、よかった?」
「・・・、・・・あんまり、覚えてないです」
それは本当だった。
あの家での時間の方が長いからか、
施設の先生の顔も、一緒にいた子達の顔も朧気で。
「施設に、戻りたいと思う?」
「・・・わからないです」
さっきから、同じことばかり言ってる気がする。
これではダメだと思うのに、
どうしたいって聞かれたら頭が回らなくなる。
なんて答えたらいいのか、わからない。
「んー・・・」
かなめさんが眉を寄せて、「でも、覚えてないってことはいい思い出もないってことだよね」と自分の手を見ながら呟いた。
ベランダで、僕に触れた手。
あの人と違ってサラサラしてて、ひんやり冷たかった。
脇腹にくる圧迫感と、見下ろした庭と道路を思い出す。
「・・・ぁ」
あることを思い出して、同時に声が出てしまった。
「ん?」
びっくりするくらいの早さで、かなめさんが顔を上げる。
「あ・・・ぇと」
「なになに、なんでも言って」
なんでも。
そんな風に言われるのは初めてのようで、ずっと前にあった気もする。
「・・・施設は、窓がなかった・・・と思います」
「窓?」
誰かが開けて抜け出さないように、
外が見える部屋が、どこにもなかった。
あの家は始終カーテンがかけられていたし、大きな窓がある場所は、ここが初めてかもしれない。
この世界に、
「・・・あんなに広い景色があるなんて、知らなかった・・・」
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