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冬の女の子・・・・終
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ボクたちがベッドの上にくたくたになって倒れこんだのは、夜8時。
ボクのお腹とシーツは、ぼくのミルクと、潮(まで吹いちゃった)でびしょびしょだった。
こんなに感じるコ初めてだよって言われちゃった。ボクだって初めてだよ。こんなの。
ボクは細い高い声でずっとあんあんあんあん泣いていた。
だって、すごく、すごぉく、幸せだったんだもの。
それはちっちゃな頃から聞いてきた、ママの声だった。
最初はママが彼氏にいじめられてるのかと怖くてベッドの中で震えてた。
でも、だんだん、ママの声がとてもしあわせそうなのがわかってきた。
ボクはベッドの中、毛布をかぶって、その声をうっとりと聞いていたんだ。
おばあちゃんの大きなお家にいたのは2週間くらいで、ボクはママの写真と一緒に住み慣れた桜木町のマンションに戻った。おばあちゃんは別に止めなかった。
大学を卒業するまではこの口座を使いなさいとおばあちゃん名義の横浜銀行のキャッシュカードを渡してくれた。
でも、クローゼットの中で見つけたママの古ぼけた薔薇のビーズ刺繍のハンドバッグの中に、何十枚もの1万円札が突っ込まれていたので、今ボクはそのお金を少しずつ使っている。
帰りは森さんが家の近くまで送ってくれた。
ご両親に怒られない?と聞かれたので、今日はいないから大丈夫って答えた。
今日もいない。明日もいない。
車の中でボクは森さんに言った。
「……お金、返しちゃダメ?」
帰り際、森さんは、最初にくれた2万円にさらに3万円ボクに渡した。
モデル料って言って。
「どうして?」
森さんが僕の顔を覗き込む。
だって…。
「……また会いたいから……」
ダメかもしれないけど。
「口止料だからもらってて」
笑いまじりに森さんが言う。
あ、そうか。そういうこと。そうだよね。
ボクはしゅんとしてマフラーの中に埋もれた。
「嘘だよ。あれはお小遣い。もらっといて。それで好きな服買いな」
ハンドルから左手を下ろし、ボクの指を絡め取りぎゅっと握ってくれた。
「まゆ、あのサイト、また覗く?」
「わかんない」
「俺、いると思うけど。で、またハメ撮りさせてくれるコ募集してると思うけど」
ボクは笑った。
「それ気にしないなら、また会おう」
「うん……気にしないよ。また会いたい」
ボクは森さんに会うたびに可愛くなろうと思った。
そしてポートレートを撮ってもらうんだ。
実際、ボクたちはそのあとも何度も会った。
会うたびに森さんはお小遣いをくれた。ボクはそれをママのハンドバッグにしまった。
マンションまで数メートルの街灯の下に車を止めてもらう。
「あのね……」
「ん?」
ボク来週誕生日なんです。
って言おうと思ったけど、来週も会ってっておねだりしてるみたいかもと思ってやめた。
でも、森さんに16歳おめでとうって言ってもらいたいな。
「ううん。今日は楽しかったです。どうもありがとうございました」
「いい子だね」
森さんはボクに向かって右手を差し出した。そして握手した。
もうキスじゃないんだ。
車を降りて、森さんが去っていくのを見送ってからマンションに向かって歩いた。
夜の空気はさらにぼくの生脚に鳥肌を立てた。でもすごく気持ちいい。
「えっ……伊藤?」
その時、女の子の驚く声がした。心臓がひやりと痛み、ボクははっと顔を上げた。
街灯の下、目をまん丸にした同じクラスの佐々木がボクを見ていた。コンビニの袋を下げている。
ボクは目をそらすことも、言い訳することもできず、やっぱり佐々木をじっと見た。見るしかなかった。
佐々木は無言のまま歩き出し、目をそらして通り過ぎていった。
そっと振り返ると、街灯の明かり先の角を曲がる前に、佐々木がちらっとボクを見た。
それからボクたちが卒業するまで、佐々木はたぶん誰にも何にも言わないでいてくれたようだ。
冬の女の子・・・・・終
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