アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
09
-
「君がそんなに嫌だったなんて、思わなくて…」
「………」
「…ごめん侑太郎。頼むから、僕のこと嫌いにならないで……!」
「ちょっ……」
今度は奏英が涙目になって、俺の体をきつく抱き締める。
力加減を知らないのか、締め付けられるような痛みに呻きながらも、バランスを保ちながら倒れないように踏ん張った。それから、とにかく奏英の機嫌をとるために必死に笑みを作る。
「き、嫌いになんて、なるわけない…だろ……。でも、ああいうのは、やめて欲しい」
「…わかった。でも、拘束は外せないよ? 一人でトイレできる?」
「っ……」
確かに、この手足の拘束が外れない限りズボンを下ろすこともできない。
そもそも、こいつがこんなに拘束にこだわるのは、自分が誘拐という罪を犯した自覚があるからだろう。俺が「ここから逃げたい」と思っていることも、当然わかっている。
なのに、こいつは俺を閉じ込めといて、「嫌われたくない」なんて……。
矛盾だらけだ。
「……じゃあ、どうやったらこの拘束を解いてくれるんだ?」
「君が、僕の元から逃げないって確信するまで」
「……それ、どのくらいかかる?」
「そんなのわからないよ」
「……」
解決策が見つからない。
俺はもちろん、この拘束具が取れたらすぐにでも逃げ出すし、警察にだって通報する。でも、奏英に「逃げない」と証明しない限り、俺はここで一生を終えるかもしれないのだ。
仕方ない。
生きるためには、多少のプライドは捨てなければ……。
「…わかった。じゃあ俺、お前に信用されるために頑張るから…。だからそれまで、トイレとか、風呂とかは、手伝って欲しい」
「良かった……侑太郎は優しいね」
今に見てろ。
お前を騙して、俺を誘拐したことを後悔させてやる。
そう決意した次の瞬間、奏英が本当に嬉しそうに笑って言った。
「”今までの奥さん”とは大違いだよ。…侑太郎に出会えて、本当に良かった」
” 今までの奥さん ”……?
なんだ、それ。
奏英は顔色も変えずにさらりとそう言ったが、俺はその言葉を聞いて一気に体が強張っていた。
俺以外にも誘拐された奴がいたってことか?それに、”今までの”ってことは一人や二人じゃない。
……そいつらは、どうなったんだ?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 85