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誘拐されて何日経ったのか、
毎朝見せられるテレビのニュースで知る。
『高月侑太郎さんが誘拐されて、二週間が経ちました。現在、犯人からの要求などは無く、警察も手がかりを全く掴めていない状況で……』
そりゃそうだ。犯人の要求は”俺自身”なんだから。
それにしても、防犯カメラの映像があるっていうのに、日本の警察は無能なのか? 何回も誘拐殺人を続けていた奏英が指名手配にもなっていないところを見ると、もう何も期待できないかもしれない……。
まだ二週間。
……もう二週間。
「侑太郎、ご飯できたよ」
「ああ……」
この事件の犯人は、何食わぬ顔でトーストとコーンスープを俺の前に置く。なぜ毎回、俺にこのニュースを見せるんだろう。それとも、自分が見たいだけなのか。
「何から食べる?」
「……お茶」
「はい」
奏英にコップを持たれ、口につけられる。それから思い切りお茶を流し込まれ、その勢いに思わず咳き込んだ。
「ああ、ごめん! 大丈夫?」
「っ、ん……大丈夫……」
やっぱり、自分のペースで食事ができないのは不便だ。一週間経ってもまだ慣れることはなく、奏英は相変わらず加減を覚えない。
ストレスで、言葉数も少なくなってくる。
嫌だと叫びたい、もうやめろと叫びたい。でも、そうすると奏英が怒って俺の首を締めてくるかもわからない。
いつか俺も、あのビデオカメラに写された奴らのように殺されちまうのかな……。
『続いては、全国のニュースです』
キャスター達の顔は打って変わり、明るい表情に変わる。音楽は華やかになり、楽しげな映像が流れ始めた。
動物園でライオンの赤ちゃんが誕生、北海道で桜が開花……。
「ふざけやがって……」
そう小さく悪態をついた途端、テレビの画面は真っ暗になった。
振り向くと、食器を洗い終えたらしい奏英の手にリモコンが握られている。どうやら、もうテレビへの興味が失せたらしい。
「あ、そうだ。侑太郎って、何の食べ物が好き?」
突然、俺にそう問いかけてきた奏英の顔は、なんとなく機嫌が良さそうだ。
そんな唐突の質問にも慣れ、なんでもないように答える。
「えっと……牛丼、とか」
「牛丼? それだけ?」
「…あとは、しゃぶしゃぶとか、焼肉…」
「ははっ、肉ばっかだね」
「……まぁ、好きだから…」
今までで一番平和な会話かもしれない。
奏英は「そっか」と呟くと、何やら支度し始めた。いつもの部屋着から、ほんの少しオシャレなよそ行きの服を着て部屋から出てくると、やっぱりどこかのモデルみたいだった。この容姿じゃ、誰もこいつが誘拐犯だなんて疑わないだろう。
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