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……待て、落ち着け。
奏英と「逃げない」と約束をした。ただの指切りだが、約束を破ればなにをされるかわからない。ヘタレと罵られても、そう簡単に逃げる覚悟はできないのだ。
ああ、そうだ。
まず、玄関のドアが開くかどうかだけ調べよう。
ドキドキと高鳴る胸を抑え、玄関へ小走りで向かう。外から足音が聞こえないか耳を澄ませた後、後手に縛られた手を器用に伸ばし、ゆっくりとドアノブに手をかけた。
ガチャ
「……あ、れ…開かねぇ……?」
ガチャガチャ、と、押しても引いても開く気配がない。
一歩引いてドア全体を見てみると、下の方に見たことのない鉄製の器具が取り付けてあった。よく見てみると、どうやら小さな鍵が必要らしい。これのせいで開かないのか。
予想はしていたが、やっぱりアイツも俺を信用してない。そんなに、俺に逃げられたくないのか……。
” 侑太郎……好きだよ ”
「っ……何思い出してんだよ…」
耳の奥で、奏英の声がする。あの柔らかくて、どこか艶めかしい唇で。何度もキスされたせいか、俺まで思考がおかしくなっちまってるのかもしれない。
「鍵……、鍵探さねぇと…」
何も罪悪感なんて、感じる必要はないんだ。
アイツは凶悪犯で、俺は被害者。百人に聞いて、百人がそう答える。
そうだ、俺は悪くない。奏英を裏切ってなんか、いない。
早く、早く。
手当たり次第に棚の引き出しを開け、鍵らしきものを探す。鍵は奏英が持っているかもしれない。でも、針金か、あわよくば予備の鍵なんかがあればなんとかできるかもしれない。
手が後手に縛られているせいで時間はかかるが、今はただ必死だっだ。
しかし、いくら探しても目当てのものは出てこない。それどころか、棚はどれも空っぽで、モデルルームに置いてある家具のように綺麗だった。
「畜生……」
やっぱり、そんな都合よくあるわけ無いか、と諦めかけると、台所が目に入った。
いつも奏英しか入らない場所。
そこだと、直感的に思った。
走って台所へ行き、食器棚から冷蔵庫まで全てを開ける。そこは棚とは違い食器や食材が並べてあって、探すのも一苦労だった。
「あ……」
冷蔵庫の中を汗だぐになって漁っていた、その時。
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