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「ただいま~」
「っ!」
カンッ、と何かがフローリングの床に落ちる。
その途端に奏英が帰ってきて、慌てて落ちたものを見下ろした。
しかしそれは期待したものではなく、小型の果物ナイフだった。
それでもこのままにしとくわけにも行かず、咄嗟にナイフを拾い後手に隠した。あわよくばナイフで縄を切れればと思いながら。
するとちょうど奏英もリビングへ入ったところで、「おかえり」と精一杯のポーカーフェイスで出迎えてやる。
「は、早かったな…」
「あれ、台所で何やってたの?」
誤魔化せなかった。
ゆっくりと、慎重にナイフで縄を切っていく。
「腹、減ったから……」
「……手が使えない君のために、味噌汁もあったと思うけど、ちゃんと飲んだ?」
「いや、ちょっと冷めててさ…電子レンジにかけようかと思って……」
「また、嘘」
「っ……」
どうして、奏英は俺の事がわかるんだろう。
嘘をつくときに笑うと言ったから、すごく真面目な顔をしてみたのに。
隠せない。見透かされる。
早く、縄を切らないと。
「違う、嘘じゃない……」
「その顔、何か見つけたんだ? 僕に見せてよ、怒らないから」
「っ、だから違うって…!」
もう少し、もう少しで切れる。
後ろに逃げようとすると、奏英の手が俺の体を引き寄せる。かと思うと体を反転されて、強く壁に押し付けられ、逃げ場をなくした。
その途端に手からナイフが落ち、カランッと乾いた音を立てる。
「あっ……」
「……」
背後で、奏英が果物ナイフを拾い上げる気配がする。
もう少しだと思った縄は、どんなに腕を引っ張ってみても切れることはなかった。
ただ、奏英を裏切ったという恐怖だけが、頭を占める。
「違う、これは……」
どうして。
どうして上手くいかないんだ。
一回目の買い物の時も、俺の思ってることがバレて閉じ込められるし。今だって、俺が何かを手に入れたことがすぐにバレて、こうしてまた逃げ場を失う。
約束を破った罰を受けるのか、
これ以上の罰って一体なんだ?
死ぬまで、一生、ここで……?
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