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「それも、やだ」
「っ……なんで…」
「死んだら、侑太郎に会えない」
相変わらず気味の悪いことを言って、顔を近づけてくる。キスされるのがわかったから、とっさに顔を背けてやった。
だが、奏英はすぐに片手で俺の頬を鷲掴んで無理やり口付けをしてくる。相変わらず、体の奥を荒らすような舌使いだ。だが今回は、キスで誤魔化されるわけにはいかない。
口付けが深くなるのに合わせて、思い切り奏英の舌を噛んでやった。すると案の定ビクッと体を震わせて、奏英は俺から離れる。
「っ……痛い」
「お前の思い通りになんか…なってたまるか」
「…………」
奏英の唇についた血を舐めとる仕草が、妙に色っぽい。
同じく口内に残った血の味を飲み込んで、奏英との睨み合いになった。
しかしそれは、突然のインターホンによって中断される。
「え……?」
「……待ってて」
時計を見ると、夜中の一時を回っていた。
こんな時間に来るなんて、宅配便ではないだろう。
ベッドから降りて足早に玄関へ向かう奏英には、心当たりがあるようだった。寝室の扉を閉めると、居間の扉も閉めたようで音が聞き取りづらくなってしまう。
……誰だ?
俺は、助けを求めていいのか?
でも、こんな時間に……まさか、奏英の協力者……?
『 』
『 』
何やら、会話が聞こえる。どうやら、少し言い争っているようだ。
誰だ。仲間か。でも、もし違ったら…?
「た…助けて……」
いい、仲間でも構わない。
これ以上最悪なことなんてないんだ。
「助けてくれっ!!」
決意してそう叫んだ途端、寝室の扉が開く。
だが、そこにいたのは、警察でも宅配便でもない。
「叫ぶのが遅かったね、侑太郎」
「っ………今の、誰なんだよ…」
「どうでもいいよ、そんなこと」
どうやら、俺が叫ぶ前に来客は帰ってしまったようだった。
落胆半分、安心半分という複雑な気持ちだった。いったい誰だったんだろう。なんとなく、奏英がさっきよりも不機嫌な気がするが……。
奏英は、のそのそとベッドに潜り込んでくると、起き上がった俺の腕を引っ張ってシーツに倒した。それから、抱き枕のように抱き締められる。
「っおい、離せ……」
「なんか喋ってよ」
「…は?」
「僕への文句でも、悪口でも、なんでもいいから……」
肩口に奏英のおでこがトンと当たる。
どうやら、不機嫌の次は、落ち込んでいるようだ。本当に、さっきの来客と何があったんだろう……。
はぁ、と場の空気が変わってしまったことに白けて、溜息をつく。
「……もしかしてさっきの客、お前の知り合いか?」
「………」
「……弟か?」
「違う」
奏英は、それ以上聞くなとでも言うように、ぐっと抱き締める腕に力を込める。
抵抗すると肩を噛まれそうだったので大人しくしていると、奏英の力も弱まっていった。
本当に、子供みたいな奴だ。
怒ったり、笑ったり、悲しんだと思ったら、また怒ったり……。
「……侑太郎、」
「………」
「奥さんが嫌なら、やめてもいいよ」
「…え……」
「その代わり、僕の家族になって」
結局、主旨が変わっていない。
せめて友達とかじゃないのか。…いや、正直友達も勘弁して欲しいが。
奏英の望んでいる形がわからない。
……それに、正直どうでもいい。
「嫌だって言っても、聞かねえんだろ……」
どうやら俺は、自由になることも、殺されることも許されないらしい。
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