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奏英と結婚とやらをしてから一週間。
あれから、奏英は本当に俺に手を出してくる気配はない。たまに物欲しそうな顔をするが、ちゃんと我慢してくれることが純粋に嬉しかった。
このまま、ずっと平和な日々が続けばいいのに……。
「ただいま、侑太郎」
「あ、あぁ……おかえり」
居間で洗濯物を畳んでいると、奏英が買い物袋を持って帰って来た。
かと思うと、その袋を床に投げ捨て、耐え切れないとでも言うように俺の背後に回り抱き締めてくる。ふわりと香る冷たい冬の匂いを、少しだけ懐かしく思った。
「はぁ……侑太郎あったかい。外すごく寒いんだよ。早く春にならないかなぁ」
「……マフラーしてけよ。風邪ひくぞ」
「侑太郎が編んでくれたらする」
「んな器用なこと出来ねぇよ……」
「僕のために頑張ってよ」
生意気言うな。昔から裁縫とか細々したの苦手なんだよ。それやるくらいなら料理極めた方がマシだ。
呆れてため息をついていると、奏英が突然俺の左手を取り指を絡めてくる。
……まだ半分も洗濯物があるのに、邪魔しないで欲しい。
「……奏英、」
「嫌だ、離さない。僕に構ってよ」
「これが終わったらな」
「そんなの僕がやっておくから……」
ああ、ほんと、ガキかよ。
俺がおとなしく主婦みてぇなことしてやってるっつーのに……。
「侑太郎、ねぇ、キスはいいんでしょ?」
「…………奏英がしたいなら」
「うん、したい。したいからこっち向いて」
畳んでいた洗濯物を取り上げられ、放られる。それに少し苛立っていると、後ろから引き倒されて唇が重なった。奏英の太腿に後頭部を預けながら、深く、深く口付けられる。
……本当は、キスも勘弁して欲しい。でも、そこまで制限しちまうと、いつか爆発するのが怖い。
それに、奏英とのキスは、正直言って気持ちいいから。
「ンっ……ん、つめ、た……」
「外、寒かったからね」
冷たい唇から、熱い舌が俺の口内へ侵入してくる。少し苦しくて奏英のコートを握ると、その手をまた絡め取られてしまう。
冷たい奏英の手が気持ちよくて、ほんの少しだけ握り返した。すると、奏英がビクッと震えて、もっと深く舌を差し込んでくる。
奏英は、本当にわかりやすい。
「ンぅ……っふ、ンン……っ、も、苦し……」
「……苦しいの、侑太郎好きでしょ?」
うるさい。
奏英の得意げな表情に腹が立たないわけではないが、俺のことを大切に思ってくれていることが伝わってくるので、何にも言えない。
それに調子に乗ってまたキスしてこようとする奏英の口を、咄嗟に手で覆って抵抗した。
「もう、終わり……離れろ」
「…………ん」
睨みながらそう言うと、奏英は素直に従ってくれた。俺の体から離れる奏英が、まるで散歩を断られた犬のように見えて、少しだけ笑えた。
「じゃあ、洗濯物やっといてくれよ。俺、晩飯作るから」
「うん。あ、お風呂掃除もしておくよ」
「あぁ、助かる」
毎日、料理当番は交代制。洗濯は奏英が、掃除は俺がするようになった。しかし奏英が買い物に出かける日には、俺が全部をやることになっている。
不満は、別にない。最大の嫌な仕事だった"性行為"が無くなったのだから。
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