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2月_6
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空の色と景色の色が一緒になる頃、俺は会社を出た。
それはもういかにも雪が降りそうな寒さと暗さで、暖房の効いた電車に早く乗ろうと足早に駅までの道を進んだ。
雪が降るかもしれないと、まだ5時だというのに社員は殆ど返された。
やっぱり雪はいいと隣の同僚は意気揚々と帰って行ったが、俺は憂鬱だった。
LINEに新しいメッセージはなくて、このまま僅かに残ったあの人の誕生日を1人で過ごさなければいけない。
かといってあの人の拒絶に耐える勇気は今はなかった。
電車に乗り込むと会社と同じ考えなのか、サラリーマンの姿が多かった。
ドアの近くにもたれかかっていると、ふと広告が目についた。
『今日しかないと思えば、言えるかなぁ「君が好きです。」』
それは男子高校生が青と白にラッピングされた箱を持ったホワイトデーの広告だった。
バレンタインの時の広告のパロディーなっていると知ったのは少し後のことになる。
今日しかない、か…。
あの人の家までは往復一時間半。いけない距離じゃない。でもきっと行ってはいけないのだと思う。
明日仕事だから寝る。まだ俺だけが大学生だった頃、そう何度も言われては電話を終わらされた。
それだけ仕事に一途な人だ。だから俺は今日行かない。
だけど、電話ぐらいしてもいいよな。だってあなたの誕生日は一年で今日しか、ないのだから。
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