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16番線ホーム_4
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「東京駅ってさ、全部把握してる人いるのかな…」
東京駅の近くでお昼を食べていると雄高がそう言った。
「んーよっぽど出張が多いサラリーマンとか、旅行好きとか?」
「やっぱそうなるよな…乗り換えとかで使ったりするけど、行かない所は本当行かないし…」
「お店もいっぱいだしね」
今いる店も初めてだった。
駅ビルの最上階にあるセルフの食べ放題のレストラン。
デザートもたくさん種類があり、天ぷらや肉じゃが、うどんまであり楽しい。
雄高もセルフの雰囲気に大分リラックスしている。
「俺さ高校生の頃初めて東京駅に来たんだよ」
「へー。そうなんだ」
雄高は茨城の北の出身だから、そうとう遠かっただろう。
「それも1人で。好きな作家の展覧会が東京でやるっていうからさ、ビクビクしながら駅の中歩いてたよ」
「うん、俺も最初に来た時はあんまり広いからびっくりしたよ。京葉線はやけに遠いし」
「皆んな同じ所に行きたがるからだろ。………でも、こんなに長く東京にいることになるとは思わなかったな」
自分であんこを挟んで作った最中を食べると、隙間から詰め込みすぎた部分が出てきてしまった。
「やっぱ盛りすぎだって、それ」
「うーん、いけると思ったんだけど難しいな…」
「慣れたらたまには自炊しろよな」
「するって」
俺だって自炊することもあるのに、雄高は全然認めてくれない。
そりゃよく自炊してる雄高にとってはしてないように見えるかもしれないけど…。
「好きな作家って、あの魚の版画の人?」
話を変えたくて、さっきの会話を繋げる。
「そう。すっごく綺麗で、写実的で。魚なんだけど表情が見えるみたいでさ…。やっぱすごいなって、感動したよ」
「ふーん。よかったね」
「おお。さ迷いながらきたかいがあったよ」
たまーに、雄高の趣味が独創的だと思ってしまうのは内緒だ。
でもすごく楽しそうに話すんだよな…。
最後のみたらし団子を食べ終えるともう2時間ぐらい経とうとしていた。
「雄高、お茶いる?」
「欲しい」
「一緒にとってくるよ」
ドリンクバーの前でお茶を入れていると、前のガラスから東京の街が見下ろせた。
思い入れなんて一つもないけど、もうスカイツリーは当分見ることはないのだと何故か寂しく思った。
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