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王子の憂鬱、姫の憂鬱
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熱を出した梓を残して、迎えに来た親とともに家に帰った悠は家に着くなり自分の部屋へ閉じこもり、布団をかぶってしまった。
頭の中は梓に拒否されたこととその時の梓の顔しか浮かばない。
このまま梓に拒否され続けたらどうしよう。
そう思うと居ても立っても居られない。だからと言って行動を起こすこともできない自分に、苛立って枕を殴る。行き場のない怒りと悲しみを全て枕に当てつける。
不貞寝をして、枕を殴って、大声をあげて泣いて、それでもぐちゃぐちゃしたこの感情は消えなくて、結局行き着いた答えは“梓に会いたい”だった。
今梓に会ったところで、また拒否されるかもしれないし、本当に嫌われるかもしれない。別れを告げられるかもしれない。そう思うと行動が起こせなくて、そんな自分を嫌悪する。
家に梓が来てくれても会う気になれず、彩葉に頼んで代わりに出てもらう。いい加減会いたがっていると言われても、会ってしまったらもう次はないかもしれない。出るに出られず、不安だけが募ってゆく。
ーーーあの日僕が1人にしてほしいと言ってから悠にさけられてる。
悠が会ってくれない。学校も休んでいるし、家へ行っても彩葉さんしか出てこない。悠は風邪だと言うけれど。絶対に違う。
ちょっとだけ1人で居たかっただけなのに、あの時からずっと1人だ。何か嫌われるようなことをしたのかもしれない。
思い当たることなら、幾らでもある。
むりに連れ回したこと。わがままばかりなこと。あまり喋らないこと。…1人にして、と言ったこと。
悠に嫌われた。愛想をつかされた。いい加減僕のことが鬱陶しくなった。
今までいつも自分の隣にいてくれた悠が、いなくなる。
このまま仲直りできなかったら、中学に入ったらバラバラになってしまう。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。…だけど、しつこくして悠にこれ以上嫌われるのも嫌だ。
そうなるくらいなら。僕の方から、
はなれる
さみしい。こわい。さむい。いやだ。
だけど。だけど、もっと嫌われたら悲しい。
さみしいのもこわいのもさむいのもいやだけど、悲しいのはいやだ。
どうしたらいいかも分からないし、何もできない。
あの時、1人になりたいなんて言わなければ。今頃悠と笑い合えていたかもしれないのに。
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