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「あっ!」
自分のすぐ下で耳障りな音が聞こえて、反射的にその方を見る。
さっき僕が洗って、食器棚に入れようとしていたマグカップが粉々になっていた。
どうしよう。この間皿を割ったばかりなのに、また先輩の食器を割ってしまった。
作業しながら物思いに耽ったりしてるからだ。僕の役立たず。
先輩が使った食器を洗って片付けるのも、僕たち1年生の仕事の1つだ。僕はそれを忠実に果たそうとしているのに、どうしていつもこうなるんだろう。
僕がやらないほうが良かったのかな。でも。やらなきゃやらないで怒られるし、どうしたら良かったんだろう。
とりあえずこの散らばった破片をどうにかしないと。
「あ……」
まずは掃除用具ロッカーから箒とちり取りを持ってこようと決めて視線を上げると、1人の先輩と目が合った。
また怒られる、という自分勝手な恐怖に心臓が痛む。
あの人はーー斜め向かいの部屋の4年生の水沢さんだ。
しまった。割れたカップに気を取られすぎてて水沢さんが来たことに全く気づかなかった。
「す、すみませ……っ、今すぐ片付けます……! このカップの持ち主の先輩にも謝りに行きます……!」
「それ、俺の」
水沢さんはさっきまでマグカップだったものを指差しながら言った。
「すみません……本当にすみません! べ、弁償させてください、僕が同じものを買ってきます」
「いや、いいからまずこの惨状をどうにかしろって」
「は、はいっ!」
僕は慌ててロッカーから箒とちり取りを持ってきて、床を掃いた。
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