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よるごころ-1(SIDE悠夜)
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◎よるごころ
本編5章「天翔演武-1~7」の悠夜SIDEです。
初の昇級試験に挑む葵琉だったが、志朗は他の生徒に掛かりっきりで――。
――――――――――
「これ、道場のじゃないか?」
「本当だー」
志朗の使いだと言って葵琉がうちのマンションに荷物を届けに来た。
紙袋から中身を取り出してから畳もうとしたところで、白い袋の底に同色の紙が貼り付いているのを見つけた。
依頼人の欄に沢井流本部と書かれた駄菓子の注文表。
俺も道場で何度か見たことがある。
昇級試験の手土産として生徒に持たせるやつだ。
そうか、そろそろそんな季節か。
懐かしいな、昇級審査。
「おい」
「何? おじちゃん」
「これ、引き取りの日付が今日になってるけどいいのか? 明日昇級試験なんだろ?」
沢井家の敷地は広くて置く場所には事欠かないが、本部生に支部生も合わせると結構な人数になる。
なので菓子の引き取りは試験の前日に行くのが慣例だった。
とりあえず志朗のやつに電話してみるか。
スケジュールが変わっていなかったら土曜の午後のクラスは1時から3時が中級だ。
その後4時から6時が上級、7時以降が選手・選抜だった筈だ。
志朗が受け持っているのは上級クラスだから、あと30分で始まってしまう。
もしかしたらもうストレッチを始めているかもしれない。
「あ、志朗か」
良かった、繋がった。
「葵琉に何かありましたか?」
何だそれ。どんだけ過保護だよ。
緊張感を孕んだ声に思わず苦笑した。
注文表のことを告げると、案の定すっかり忘れていたらしく慌てている。
「あそこの店、6時で閉まるだろ。お前今からクラスじゃないのか?」
「……はい」
いつも余裕の笑顔を欠かさないやつが困り果てているのが電話越しに伝わってくる。
可愛い後輩だからな。
何とかしてやりたい気持ちもない事はない。
「たまには俺が行って代わりに稽古つけてやろうか?」
「試験前日に生徒全員潰す気ですか?」
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