アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
よるごころ-2
-
失礼なやつだな。
確かに俺のクラスはキツいっていうやつ多かったけどなー。
単にウサギ跳びで道場10周とか、拳立て伏せ100回とか、やる事自体は簡単なのに最近の若いもんは根性がない。
久々に指導をしたかったけど、本気でやったら明日の試験に本部生がゼロなんて事態になりかねない。
かといって甘々なクラスなど俺の名が廃る。
しゃあない、菓子をとりに行ってやるか。
「領収書は『沢井流本部』でよかったよな? じゃあ、後でお前んとこに持ってくわ」
「俺も行く! お菓子買いたい」
「あ、すいません。気にしないで下さい」
葵琉の声が聞こえたのか、電話の向こうで志朗が苦笑している。
「いいよ、一緒に連れてって帰りに道場に送ってくわ」
頼まれた菓子を届けに行ったのは6時を少し回った頃だった。
ちょうどクラスが終わる時間だし、3人で飯を食いに行くのも悪くはない。
もう部屋に戻っているかと思いきや、志朗は明日の試験が心配な生徒の為に残って稽古をしていた。
俺の顔を見るとすぐに駆け寄ってきたが、荷物と代金の授受だけすると挨拶もそこそこに稽古に戻ってしまう。
葵琉はというと、稽古場に入らず廊下で中の様子を伺っている。
「何だ、入って来なかったのか」
「シロ、練習の邪魔すると怒るから」
「あいつは稽古となると人が変わるからな」
流派を継ぐ気もないのにな。
「しゃあない、二人で何か食いに行くか」
「シロ……」
名残惜しそうに志朗の方を振り返り振り返り歩いているのを見ると、どんだけあいつの事が好きなんだよと突っ込みたくなる。
物好きなやつ。
志朗なんて何の面白みもない男なのにな。
あいつが3歳で道場に顔を出すようになった頃から知っているがちっとも変わらない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 86