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よるごころ-7
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「でも、何で帯替えたの?」
「本番ひとりで演るの緊張するだろ?」
「うん」
いつもの稽古場でも、昇級試験の会場となった途端にガラリと雰囲気が変わって見える。
「俺の心はいつもお前のそばにある。俺が隣で一緒にやってると思うと安心だろ?」
「うん」
「頑張ろうな」
「うんっ!」
これで仕上げだとばかりに葵琉の頭をひと撫でして、そのまま抱き寄せると、とてつもない大きさと強さの気の塊が飛んできた。
「あーっ、もうダメだっ」
いきなり笑い出した俺を見る葵琉の顔に「おじちゃんが狂った」と書いてあるけど、そんな事すら気にならないぐらい笑える!
志朗が、あの朴念仁の志朗が俺に嫉妬の炎を燃やす日が来るとはな!!
笑いが収まった頃ようやく始まった葵琉の演武は、文句なしに100点満点の出来映えだった。
俺が教えてやったポイントもしっかり押さえていた。
演技を終えて戻ってきた葵琉をハグで迎え、額の汗を拭いてやる。
背後から気の塊がもう1発飛んできたけど、そんなもんじゃ俺には効かねえな。
「緊張したか?」
「うん、めっちゃ緊張した」
良くできていたぞと頭を撫でてやるとまだ緊張が解けない顔に仄かに笑顔が浮かぶ。
「表彰式が楽しみだな」
「そう?」
白帯が終わって10分間休憩する間に採点が行われて、休憩が明けるとすぐに表彰式となる。
表彰式は合格した生徒の中で点数が下位の者から順に呼ばれて級証と新しい帯を受けとる。
なかなか名前が呼ばれず顔がひきつる葵琉の頭を黙って撫でてやった。
「大丈夫だ」
最後の最後にやっと名前を呼ばれて葵琉の顔が向日葵のようにパッと明るく輝いた。
「よかったぁ! おじちゃん、ありがと」
「やったな! ほら、行ってこい」
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