アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
よるごころ-8(完)
-
「おじちゃんと一緒に寝てるって言ったらシロ怒るかな?」
「問題ねえだろ。お前と俺は……兄弟みたいなもんだし」
「何で?」
「志朗と俺は師父んとこで兄弟のようにして育っただろ? だから俺にとってお前も弟だ」
そっか~とホッとしたように目を細めた葵琉はすぐに寝息を立て出した。
今日は祝勝会だと称して夕飯に連れて行ってそのまま家に泊めたけど、明日の朝には志朗が迎えに来るだろう。
このままこいつが家に居たらいいのにな。
明日の夜の一人寝はいつもに増してキツそうだ。
翌朝、志朗のやつにメールを送ると30分もせずに家に現れた。
「俺のなんです。返して貰いに来ました」
ここまでの満面の笑みはなかなか見たことがない。
その裏にどれ程の感情が覆い隠されているのだろうか。
幼い頃の志朗は今のあいつからは想像がつかないほどの泣き虫だった。
試合に負けて、稽古が厳しくて、志朗が泣き顔を見せるたびに師父は厳めしい表情で叱り飛ばした。
泣きながら足元にすがり付く志朗に師父は「泣くんじゃない。強くなりたかったら常に笑顔でいろ」と言った。
俺やルミが泣いていると師父は道場の隅にある缶の中から飴を取り出して手に載せてくれた。
周りの道場生も恐らく志朗本人も、師父は俺の事ばかり可愛がって志朗には厳しいと思っていた。
あの頃は。
だけど、真相は逆だ。
それに気付いた頃だ、志朗に対する感情が一変したのは。
「返さないって言ったら?」
「貴方を倒してここを抜けます」
「でも俺強いよ?」
「知ってます」
即答か。
俺もずいぶん下に見られたもんだ。
俺が道場を去ったその日まで一度たりとも負けたことはなかった。
そして今日だって。
俺は負けない。
たとえどんな手を使ってもな!!
(完)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 86