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とらごころ-1(SIDE虎太郎)
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◎とらごころ
「天翔演武-13」の虎太郎SIDEです。
昇段試験を控えた葵琉に試練が!?
――――――――――
葵琉先輩が今度沢井流の昇段試験を受けると志朗兄さんが教えてくれました。
「だけど、今回ばかりは難しいな」
「え?」
「組み手がね……」
「あ……」
昇段審査の組み手は、階級別男女別で段持ちの相手と当てられます。
葵琉先輩の階級(大人の軽量級)は俺を倒さなければならないのですが、葵琉先輩は組み手を苦手とされているので……。
俺がわざと負ければ話は丸く収まるのですが、それはいわゆる八百長です。
俺のわがままで葵琉先輩を悲しませたくはない。
だけど、八百長だけはどうしてもやりたくないのです。
「黒より赤の方が好きだし~」
志朗兄さんから昇段は難しいと聞かされた葵琉先輩は、気にしていない素振りを見せていますが、俺にはどうしても本心だとは思えません。
ある日の練習後、帯に入れる刺繍の下書きを握りしめた葵琉先輩が物陰に隠れて泣いているところを見てしまいました。
「葵琉先輩……」
思わず駆け寄りそうになりましたが、今出ていくべきではないと思い直し、そっとその場を後にしました。
志朗兄さんには黄帯騒動の恩があります。
志朗兄さんの大事な人は、俺にとっても大事な人です!!
俺が沢井流を去ることで葵琉先輩の組み手の相手が代わって黒帯を取れるなら!
今こそ志朗兄さんにご恩を返す時なのです。
そう思って、次の日の朝一で沢井流からの離脱を申し出ました。
俺が辞めれば葵琉先輩の対戦相手は格下の相手となり、勝算が出て来ます。
退会届を提出して私物を整理していると悠夜兄さんがドタドタと走って来ました。
「急に辞めるってどういう事だ!」
「実家の農業を手伝わなければならないので」
「はあっ!? お前が居なくなったら誰が俺の付け人するんだよ!」
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