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ゆきごころ-1
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◎ゆきごころ
「天翔演武-13」の葵琉SIDEです。
沢井流最後の日、葵琉が庭で出会ったのは――。
――――――――――
今までの試験では級証やら新しい帯やら賞状やらいっぱいお土産があったけど今日貰ったのは結果表がペランと一枚だけ。
その結果表の片隅にも、受かった時と同じお菓子引換券が付いていた。
「代わりに貰っといて」
俺はもう帰れるけど師範長のシロはまだ模範演技が残ってるから引換券を託してフラッと庭に出てみた。
初めての昇級審査の日、悠夜おじちゃんが俺を迎えに来た池の畔に無意識に足が向いていた。
おかみさんがやっている三味線教室の時間なのか、障子の向こうから沖縄っぽい音色が聞こえてくる。
明日から自由の身だし、おかみさんに三味線でも習おっかな~。
今まで沢井流の稽古についてくために自主練とかに割いていた時間も好きに使っていいんだ。
シロが稽古を終えるのを待つ間にできる何か新しい趣味を始めるのも悪くはないし。
鯉の世話係をしているシロに頼まれて餌をやりに来ているからか、俺が池の縁に腰掛けると鯉が1匹2匹と寄ってくる。
金色だったり緋色だったり様々な色柄の鯉が飼われて居る中で俺のお気に入りは白地に赤い線が入ったやつ。
周りの鯉に比べて体が一回り小さいその鯉はエサをばら蒔いても他の仲間に全部取られて自分の口には入らないことが多い。
だから俺の時はいつもその鯉の口に直接放りこんでやっていた。
魚でも贔屓されているのは分かるのか、俺の姿を見つけると一目散に泳いでくる。
エサなんて持ってきてないのに。
エサをねだってパクパクさせているその口に手近な葉っぱをちぎってぶつけると疑うことを知らない鯉はそれを口に含んだ。
口の中で暫くモグモグやっていたかと思うとプッと口から出できた葉っぱが流れて行く。
懲りもせず口をパクパクやっている鯉の模様をジーっと見てたら胡座を掻いた道着の太股に水滴が滲んだ。
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