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ゆきごころ-2
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「今日はここまで」
よく通るおかみさんの声を合図に障子が開けられ、廊下が騒がしくなった。
人の気配を感じたのか、こっちに集まっていた鯉たちも一旦石橋の下に引っ込んで行く。
ひとしきりバタバタした後はまた元のように静寂が戻って来て、鯉たちもま再び足元に集まってパクパクやりだす。
しょうがないなー。
鯉たちの執念に負けて、縁台の下にあるエサを取りに行こうと立ち上がって一歩踏み出したところで足が止まった。
いつの間に現れたのか、縁台に作務衣を纏った人物が三味線を携えて正座していた。
何この綺麗な人……。
日頃、悠夜おじちゃんとか月灯先輩とかで美形は見慣れている筈なのに美人の求心力(?)って恐ろしい。
じろじろ見ては失礼だと分かってはいても目が離せないでいると目があってしまった。
「こんばんわ」
「こんに……ばわ?」
ん? 今俺何て言った?
てか男?
艶やかなストレートの黒髪が作務衣の胸に垂れていて、てっきり女性だとばかり思っていたのにまさかの低音ボイス。
よく見たら控え目ながら喉仏もある。
それにしても、この感覚はなんだろう。
こんな美形一度見たら絶対に忘れないから初めましての筈なのにどっかで見た感じがするんだけど思い出せない。
誰だ~?
記憶の糸をあちこち辿りながら縁台の下に置かれたプラスチックボックスから鯉のエサを取りだした。
忙しい時はスコップでワサーッと放り込むけど今みたいに暇~な時は一粒ずつ鯉の口に命中させて遊ぶのがいい暇潰しになる。
で、誰だっけ?
大学も男が多いし高校は男ばっかりだし……ってそもそも男だった。
あの外見に脳が完全に騙されてた。
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