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ゆきごころ-3
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三味線やってる人なんだから沢井流の敷地内で顔を合わせたって線が濃厚そうだけど、そんな感じじゃないし。
思い思いの場所に散ってしまった鯉も気配を敏感に嗅ぎ付けて戻ってきた。
「あれ誰だっけ~」
鯉はここん家の住人なんだから誰だか知ってるだろなー。
知ってても鯉は教えてくれないけど。
庭にゆるゆると流れて行く三味線の音色に引き込まれていた。
物悲しいような沖縄の音楽は俺の心につかえていた塊を包み込む。
それはサラサラと砂糖のようにほどけていった。
縁側で三味線を奏でるこの人は庭の草木や鯉や鳥たちと友達でそんな友達に音楽を届けているみたいだ。
「?」
いつの間にか三味線の音が止んでいた。
帰ったのかなと思って縁台の方を振り返ると、その目が至近距離であの人を捉えて心臓が跳び跳ねた。
忍者じゃないんだからもうちょっと気配というものを身に纏ってほしい。
綺麗な顔でニコッと微笑まれたけど、こっちは上手くニコッと返せた自信がない。
「ハイビスカスみたいで綺麗な赤ですね」
「ハイビスカス?」
「沖縄に咲く花です。貴方の帯のような綺麗な赤色をしていて、眺めているだけで心がパッと明るくなるんですよ」
ハイビスカスぐらい知ってる。
さすがに本物は見たことはないけど高校の時の先輩がカバンに付けていたキーホルダーが揺れると光るハイビスカスだったから。
俺の帯を眩しそうに眺めるこの人はよっぽどハイビスカスが好きなんだろうな。
でも悪いけどこれほどハイビスカスから程遠い人も珍しい。
儚げではらはらと散る薄ピンクの桜の花びらって感じ。
ハイビスカスはどちらかというと悠夜おじちゃんみたいなドーンとした派手な人間のイメージ。
「私の時はもっとくすんだ赤でした」
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