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翡翠と白鷺(青)-3
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「誰?」
あ、見つかった。
たっぷり5分は座って居たはずなのにそれを微塵も感じさせない機敏な動作でスッと立ち上がってこっちに歩み寄ってくる。
その所作に目を奪われて、今の自分の状況を取り繕うことをすっかり忘れていた。
武道場の入り口でヨガのポーズみたいな格好して呻いてるのが初対面なんてみっともなすぎる。
「大丈夫?」
大丈夫じゃないけど、これ以上恥の上塗りをしたくなくて必死でコクコク頷くと両脇に手を差し込んで立たせてくれた。
何だか小さい子供みたいな扱いで不満なんだけど。
「新入生?」
「うん」
先輩には敬語を使わなきゃいけないってわかってるし、武道の世界とか特にそういう上下関係的な事に厳しいのも知ってるけどあえて「うん」で。
帯と同じ色の髪の毛は短く切ってあるから眉毛の動きがはっきりわかる。
一瞬ピクッとした眉毛がすぐに元の配置に戻ったから、きっと忍耐強い人なんだ。
黒い帯に金の糸で刺繍されているのを読んでみると片側には「沢井流」、もう片方には「SHIRO.S」って書いてあった。
そっか、この人はシロって言うんだ。
「こんな所で何してるの?」
俺の身長が小さいのは重々承知しているし、シロが平均よりデカイのもわかるんだけど、この見下ろされる感覚は切ない。
「先輩の、さっきやってたやつがかっこよくて」
名前も知らないその技を自分もやってみたかったと言うとシロは「後ろ回し蹴り」だと教えてくれた。
「俺も出来るようになるかな」
「そうだな、体育の選択で沢井流取ったら週1で授業があるから1年ぐらいしたら出来るようになるかもな」
「1年!!」
今日や明日出来るようになるものじゃないとは思ってたけど1年がかりと知って、一気にやる気が失せた。
いいんだ、見る専門で。
「部活に入れば毎日練習あるからセンスがあれば早くて3ヶ月ぐらいで出来るかな……」
シロは真面目に考え出してしまったけど精鋭揃いの沢井流部に割って入るなんて俺には絶対無理!!
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