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つきごころ-1
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◎つきごころ
本編4章「俺のストレス解消法」の葵琉SIDEです。
ケンカしていた志朗と仲直りするために背後から抱き付いた筈が!?
――――――――――
「お前また前髪引っ掛かったのか」
「うん」
漫画を読むのに夢中になっていた俺はシロの背後から真っ赤な怒りオーラがフシュフシュと沸き上がっている事に気付いていなかった。
「うんじゃない。明日までに切って来いよ」
「えー。やだ」
「やだじゃない」
シロの口調が珍しく厳しくなった事で、ようやく漫画を伏せて向き直ったけど謝る気など毛頭なかった。
「何でさシロは俺にばっかり厳しくするの」
「何?」
「だって瀧川先輩は前髪もピアスも怒られないのになんで俺ばっかり? 不公平だし」
はぁ、と大きくため息をついたシロの掌が俺の肩をグッと掴んだ。
力こそ入っていなくても、沢井流で鍛えぬかれた指の1本1本に肩をがっちり捉えられると身動きは叶わないと悟る。
「前にも言っただろ? 月灯は学年首席。悔しかったらお前も勉強頑張るんだな」
シロは俺の目を真っ直ぐに見据えてゆっくりと言い含めてくる。
静かに紡ぎ出される言葉から先程の怒気は払拭されていたけど、この冷静さがシロの怒りのバロメーターだとも言われているから恐ろしい。
「無理っ。シロがいつも言うじゃん。人にはさ、得意不得意があるんだって」
「じゃあ諦めな」
「やだ!
「葵琉!!」
「ふんっ。瀧川先輩が切らないなら俺も絶対切らないから」
こうなれば売り言葉に買い言葉だ。
だけど俺の言葉に返事を返したのは意外な人物だった。
「俺が何だって?」
「あ……」
いつのまにか背後に現れたのは当の瀧川先輩で、その姿が目に入った途端顔から血の気が引いた。
シロは呆れた顔をしてるけどそれどころじゃない。
「月灯は前髪長くても怒られないからムカつくんだって」
「ほう」
瀧川先輩の鋭い目がギロリとこっちを向いた。
シロが余計な事言うから!!
「お前さー、いっつも月灯は贔屓されてるだのズルいだの言うけど本人目の前にしたら何も言えねえだろ。陰でコソコソ言うんだったら最初から言うな」
「……」
言い分はいっぱいあるのに言葉がうまく出て来なくて代わりに涙が出てきそうになるのをグッと飲み込んだ。
「シロも先輩も鞘も大っ嫌い!!」
ようやく出てきた声で言い放って生徒会室を飛び出した。
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