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よるごころ-6
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本番まであともう少し、受審するメンバーは各自で思い思いにストレッチをしている。
部屋の縁で並んで待機している俺たちを志朗が反対側からチラチラと見ているのには気づいていたが、あえて挑発するように葵琉にくっついてやった。
「暑いな」
部屋の中は熱気でむわんとしている。
冷蔵庫の中からスポーツドリンクの入ったペットボトルを取り出すと、ゆっくり一口くちに含んだ。
「飲むか?」
そのままキャップを閉めずに隣でちょこんと座ってるやつの口元に持っていく。
俺の意図を知らない葵琉は素直に口をつけたが、その瞬間部屋中にゾッとする冷気が立ち込めた。
面白ぇ。
思わず笑いがこみ上げてくる。
「葵琉」
「なに? おじちゃん」
「ネックレス危ないから外しとけ」
道着の首元から覗くネックレスは、審判によっては減点を取られかねない。
「うん。でもカバン向こうの部屋だし……」
「俺が預かっててやるよ」
葵琉の首から志朗のネックレスを外すと、対岸で見ていたご主人様の顔がリアル般若に見えてきて笑いが止まらない。
こうなればもっと面白い事をしたくなる。
「おい、葵琉。帯外せ」
「何で?」
「いいから」
葵琉が自分の白帯を外している間に、稽古場の隅にある自分のロッカーからあるものを取り出した。
「誰の帯?」
「俺のだ」
年季の入った白帯は俺が入門した時に締めていたものだから10年以上経っている。
「おじちゃんの匂いがする~」
何かヤな言い方だな。
葵琉が垂れた帯の端を持ってクンクンと匂いを嗅いでいるのを向こう岸から番犬様が睨み付けてくる。
面白ぇーーーっ。
あー、大声だして笑いてぇ。
庭に穴掘って笑って来っかな。
あの一睨みで30人ぐらい殺せそうだよな。
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